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弐佰肆拾捌頁─両組織ノ困惑 13─ ページ22

A Side


「久しぶりの居心地。真逆、また此処に落ち着けるなんて思ってなかったヨ」




腕の中で気持ちよさそうに寝返りをうってゴロゴロと喉を鳴らす。

意地悪をする太宰は放って私はフルールから事情を聞いた。

彼の返答は単純明快。

特別気にすることはなく、ただいつも通り大人と話しているようにすれば善いと。




「おーい、クマくん。こっちおいでー」




陽気な声がフルールを呼ぶ。

顔を上げると名探偵さんが此方に向かって手を振っていた。

フルールは名残惜しそうにするものの腕の中から飛び出していく。

あの様子だと案外安心しても善いのかな。




「あ、今日君に任せる仕事は無いよ。太宰に戻してもらうまでゆっくりするといい」




膝の上にフルールを乗せ、ポンポンと頭を撫でる。

彼の手には棒付きキャンディがあった。

菓子入れの中の煎餅を強請るフルールに心が和む。


それにしても仕事をしなくてもいいとは。

その分明日が怖いけど、今の不安定な状態でこなすよりかは気が楽かもしれない。

てっきり仕事をする気満々で来たから少し拍子抜けだけど。

でも、どうしてそんなことに。




「仲間外れにしているわけではない。文句があるならそのぬいぐるみに云え」




先程太宰と一緒に帰社していたもう一人の人物が眼鏡を押し上げる。

別に不満があったわけじゃないがあの子の指示なら尚更お言葉に甘えて。

素敵な提案をしてくれた彼をぎゅっと抱きしめてあげたいが残念ながら今は浮気中。

私以外と仲良くしているのは光景は嬉しくありつつも少し複雑だった。


しかしながら何もしないというのはとても退屈で暇で、私は机の中に入っていた紐を結んであやとりで遊んだ。

杯、エプロン、豆電球と続けて最後にピンと引っ張る。

一連の流れが終わったところで弱々しい声が聞こえてきた。




「んー、何でだろう......」




気になって画面を覗いてみると、白髪の彼は思うように文字が打てていないようだった。

パソコン使い慣れてないのかな。




『それ、ロックキー押してますよ。あと此処の云い回しは変えたほうが善いです』




キーボードの端にあるボタンを押して入力を通常に戻す。

ついでに目に止まった誤字も軽く修正した。




「わぁ、ありがとうございます!助かりました!」




青年の曇り一つない晴れた笑顔。

こんなにも感謝されるとは思いもしなかった私は少し戸惑う。

ただの暇潰しの一環だとは口が裂けても云えなかった。

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ラッキーカラー

あずきいろ


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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時

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