弐佰肆拾弐頁─両組織ノ困惑 7─ ページ16
「ふふっ」
時間をかけて発した言葉。
それは男の小さな笑いによっていとも容易く薙ぎ払われた。
私、結構真面目に答えたんだけど...?
思わず固まる躰に彼が笑いを堪えていると判る音が届く。
「いやいや、すまないね。何だか昔を思い出したよ」
『貴方は私のことを知っているのですか?』
「勿論。家族でも赤の他人でもない。私が森鴎外本人だ」
『......え』
「因みに、君が中也君の兄だと云った人物も彼本人だよ」と続けて云われ、頭の中をぐるぐるとそれを理解するための情報が忙しなく飛び交った。
「君がA君だということはもう認めても善いのだけれど、その記憶がどこまであるのかが知りたい。仮にも私は首領だからね。手の届く範囲の危険は排除したい。まず、中也君のことは知っているのだね?」
『はい、知っています。先日、首領に教育係を頼まれた二人の内の一人なので』
「成程。君達四人に任務を頼む前辺りか」
四人?私と太宰と中也、あとは鈴奈だろうか?
確かに近いうちに任されるとは思っていたが、私の記憶ではまだそれは行われていない。
「まぁ太宰君が触れれば直ぐに元に戻るだろう。私から探偵社へ連絡は入れておくけど...その様子だと記憶も十三歳頃のものしかないようだ。中也君、彼女を武装探偵社まで送り届けてほしい。頼めるかね?」
「はい、俺は大丈夫ですが...」
中也が此方に目を向ける。
恐らく彼の目には頭を抱える私の姿が映っているのだろう。
そのような弱々しい姿は見せたくないのだが、今はそんなことを気にしている暇は無い。
『あ、あの詳しく説明してください。...武装探偵社とは?そこに太宰が居るんですか?』
「説明は其処に向かいながらする。早く行くぞ」
『あ、ちょっ!』
まだその場から動かずに考えていたかったが、それを許さない異能の効力。
肩を触れられて無理矢理床から離される。
そうなってしまっては幾ら抵抗しても無駄だ。
私はそのまま彼の肩に担がれて首領の部屋を後にした。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時