月下、貴族のダンスパーティー ページ16
『…つまらなすぎる。』
月の光が降り注ぐベランダの柵にもたれかかり、そうごちる。久しぶりに着たドレスは動きにくいったらありゃしないし知らない貴族に愛想を振りまくのも疲れてしまった。かれこれ数時間ぶっ続けで口角を上げていたせいで頬の筋肉が痙攣している。
普段は情報屋をしている私がなぜドレスなんかを着ているのか。きっかけは一通の手紙だった。
いつも通りレイの喫茶店のカウンター席でお茶を飲んでいると男性客が隣に座ってきて、手紙を渡してきた。手紙を渡した後、その男は何も頼まずに出て行ってしまった。なんだあいつ...。と思いつつ、手紙を開いてみる。内容は以下の通りだ。
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フーカへ
元気にしているか？
数年前に家を出て行ったお前だが、今回の我がリューゲ家主催ダンスパーティーに出席してほしい。
日時は○月×日 △時だ。
よろしく頼む。
父より
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正直かなりめんどくさい。そのままぶっちしてもよかったのだが最近暇だし行ってやるか、どうせあいさつ回りとかはやらないだろう、と暇つぶしくらいの気持ちで会場に向かった。
会場に出向いてみれば、なんと驚き。あいさつ回りも、何ならスピーチだってやらされた。こんなのやらされるなんて聞いていない。まずなぜ家を出た娘にこんなことをやらせるのか。もういっそここから＿＿
「失礼、お嬢さん。お外にいたらお体が冷えますよ。どうです？一緒にワインでも。」
急に話しかけられて思考が中断させられる。くっそ、抜け出そうと思ったのに。
にたりと笑ったそこまで顔がいいわけでもない男。こいつ、私が主催者の娘だからって媚びようとしてるな？まぁ、暇だったし乗ってやろうじゃないか。
『ええ、いただきますわ。』
そう言って会場に戻る。男はちゃっかり私の腰に手をまわしている。汚い手で触んな、蹴るぞ。
「そういえば、フーカ様は今我々国の方に身を寄せているとお聞きしました。」
しばらく男と談笑を続けていると、ふいに男からこんな言葉が飛び出す。
『え、ええ。それが何か？』
「いえ、今は戦争中だとお聞きしましてね、物騒でしょう？どうです？また我が国に戻る気は＿＿」
『お断りします。』
とんでもないことを言い出す男の発言にかぶせてきっぱりと断る。残念、私はあの国を気に入ってるんだ。
『私はこれで。失礼しますわ。』
にこりと微笑みその場を後にした。
担当：774の風花
次：rieさん
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