菫と果実《Kei.i》 (ページ44)

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・四十三ページ44

慧「A、、、

なんでここに」

そう訪ねて私の傍に近づく慧様

目の前には愛してやまない人

貴方「慧様」

あなたに近づきたくて前に進むけれど

繋がれた縄はそれを許してくれない

拘束さた腕はあなたのいる場所に伸ばすことさえ許されない

今すぐに抱きしめて

あなたに触れたい

でもね

貴方「なんで、」

なぜ、あなたはそれを拒むの？

婚約者がいるから？

もうその人を愛してしまった？

私の事は

もう忘れちゃった？

貴方「傍にいてくれないのですか？」

慧「ッ、」

・

お菊「なんですか？騒がしい」

慧「お菊、」

貴方「お、菊、」

そこに立っているのは美しく育ちも良さそうな人

聞かなくてもわかる

この人が婚約者なのだろうと

お菊「慧様、誰ですか、この女は」

そう言い私の顎を掴んでくる

慧「やめ、」
貴方「わっちはAでありんす」

慧「A、」

お菊「は、？わっち？

ふふふ、吉原の下郎が何故ここに

どうして門を通したのかしら？

小汚い娘はこんなところにはいりません」

そう私を見下し笑う

屈辱だった

嫌だとはいえ、私はあそこで育ってきた

素敵な思い出だってある

それなのに人生の全てを否定されるようだった

貴方「うるさい、」

お菊「あぁ？

なんですって？」

貴方「あんたにわっちの何がわかりんす？

裕福なお家柄の方はもっと御心が綺麗だと思いんしたのに

これならばわっちのおった遊郭の方がよっぽどっ！

いい人達が多いでありんす」

お菊「な、馬鹿馬鹿しい

口うるさい小娘ね、誰かやってしまっ」
慧「やめろ！」

お菊「慧様？！」

慧「もういい、やめろ」