・二十八 ページ29
菫 「よく聞きんさい、A」
貴方 「はい！」
菫 「お前はスミレの花言葉を覚えておるか？」
それは私が庭に咲いていたスミレを積んでしまった時に教えられた事
貴方 「確か、貞節、愛、、、
でありんす」
菫 「そうじゃ、A
お前は愛を大切にしなさい」
貴方 「あい、？」
菫 「心からこの人といたいと思う人が出来たなら
抗って、抗い続けて
それを勝ち取りなさい」
菫 「我儘に美しく生きなさい」
貴方 「我儘に、美しく、
抗って、、、」
菫 「そう」
菫 「お前はそうやって美しくなっていきんさい」
貴方 「わっちには出会えますか？」
菫 「必ず
いいかい、A、誰かを愛するってすごく幸せなことだよ」
菫 「お前がわっちの妹でよかったよ
ありがとう」
貴方 「ッ、！」
その言葉と共に菫さんはこの遊郭を去っていった
それからは少しの間だけ薊花魁に世話になったけれど
ほんの数ヶ月ほどで私の水揚げが行われた
昼見世の時に一度だけ薮様が来て
宏太 「きっと菫以上の花魁になるね」
って笑ってくれて
宏太 「ごめんね」
と切なそうにして
宏太 「Aはちゃんと愛した人と幸せになるんだよ」
って菫さんと同じ事を言って帰っていった
それからは薮様が来ることは無くて
遊郭の中でも菫さんの事は忘れられる過去になりつつあった
それなのに
女将 「どういうことだい！
菫が行方不明なんて」
金次郎様の家に嫁いだはずの菫さんが行方をくらましたと連絡が来た
長らく金次郎様の命で捜索されたが
そのまま菫さんが現れることは一度もなかった
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作者名：いのみづちゃん
| 作成日時：2017年8月29日 10時
