菫と果実《Kei.i》 (ページ28)

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・二十七ページ28

とうとう来てしまった菫さんが正式に金次郎様の家に嫁ぐ時

バタバタと役人達が準備を進めていく

菫さんは美しい白の着物に身を包み

今まで以上に華やかな化粧をした

真っ赤な紅を塗る菫さんはそれはそれは美しかった

そんな菫さんと話す暇など与えられなくて

気づけばもうすぐお別れの時間もすぐそことなっていた

女将「A、菫が部屋へ来いと言っておる」

貴方「わっちですか？」

女将「はよ行かんさい」

貴方「は、はい」

そう言われ急ぎ足で菫さんの部屋へ向かう

行きなれた廊下を歩くのが少し寂しく感じた

貴方「菫さん、Aでありんす

失礼します」

菫「来たか」

襖の奥に現れたのは無垢に包まれる姉さんと

貴方「どうされたのですか？」

菫「なんじゃ、可愛い妹と最後に話したいと思うことはいけないことか？」

貴方「いえ、わっちも菫さんと最後に話せて嬉しいでありんす」

菫「そうか、

実はこれをお前に渡そうと思おてな」

そう言って渡されたのは菫さんがいつも着ていた着物だった

貴方「これ、」

菫「値は良いもののはずじゃ

わっちもまだ一年ほどしか着ておらん

まだまだ着れる」

この着物は菫さんが薮様にちょうど一年前くらいに貰ったもので

菫さんはこの着物を着続けた

貴方「いいんですか？

だって、これは、」

菫「違う人の家に嫁ぐのじゃ

宏太様の事は忘れよう」

そう言って遠くを見つめ悲しい顔をする菫さん

それを見るのが苦しかった

菫「よく聞きんさい、A」