【オリジナル】石化の魔眼を持つ少年Ⅰ (ページ9)

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9話ページ9

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『あ、れ…な、なんで……？』

僕の目から、僕の左目から、ずっと涙が溢れ出ている。

手の甲や袖で拭き取ろうにも取れないくらい、ずっと溢れ出している。

「琴くんも…よく、頑張ったわね」

そう言って、お母さんは僕にティッシュを差し出した。

「いっぱい泣くといい、泣くことも大切だ」

お父さんはお母さんと同様、優しい笑みを向けた。

こんな…こんな化け物に、二人は優しく接するのだろう。

どれだけ天使のような存在なのだろうか、余程育ちがいいんだろうな。

葵も…天使のような両親に恵まれ、いい人生を送っているんだろう。

『ありがとう…御座います…』

僕はティッシュを受け取り、涙を拭き取りながら笑ってみせた。

その顔はぐしゃぐしゃだっただろう、だけど二人は優しい笑みを向けて、僕の頭を優しく撫でた。

その仕草すらも天使のように優しく、僕の涙は全く止まらなかった。

『うぅ、うぅう…あぁああ…』

一生分の涙が出たんじゃないか、そう錯覚する程溢れ出ている。

ティッシュで拭こうがすぐティッシュが僕の涙で濡れる。

『僕も…こんな家庭に、産まれたかったなぁあ…』

泣きながら、そんな言葉を零した。

それを聞いた二人は、優しい笑みを浮かべた。

「私も、貴方が子供であったら、葵も一緒に愛情をいーっぱいあげたかったわ」

「俺も同じ…琴くんも、葵と平等の愛情をあげたいよ」

どこまで、この人達は優しいんだろうか。

言葉一つ一つに、僕は救われる。

これが僕の求めていた幸せだった、ただ…今の人生は、完全には幸せじゃないだろう。

今はこの幸せでいい、今だけでも…この幸せを噛み締めたい。

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