誰と重ねた、なんて言わない ページ10
.
「何から何まで悪かったな」
「いえ！」
「「……」」
「お前らニ人も、ありがとな」
「「……」」
「……坂野上、お前は１年組唯一の良心だな」
「い、いえ！」
洗濯物を取り込み終えた１年組+αは、どこか聞き覚えのある会話を繰り広げながら、宿舎を歩いていた。
この四人が、こうして洗濯カゴを抱えながら並んで歩くのは現在が初めてではなく、数時間前もこうして歩いていたのだが、その時と決定的に違うのはカゴに入った洗濯物が水気を帯びていないこと、だ。
「まあでも正直、お前らが洗濯系の家事ができることには驚いたよ」
ほのかに香る柔軟剤を纏ったフェイスタオルやスポーツタオルを指定の場所に置き、最後となったバスタオルを大浴場へと繋がる脱衣所、シャワールームの更衣室の所定の棚に仕舞う。そして棚の扉を閉めた美琴は、自分が持っていたカゴを胸の前で抱きしめる一星、カゴを足元に置き椅子に座る灰崎、傍で仕舞うのを手伝ってくれた坂野上たち三人に向き直り、目を細めてイタズラに笑う。
「……これくらい、出来ない方が可笑しいですよ」
「そうです！これくらいなら僕たちにだってできますよ！」
「……」
「それも、そうか」
三者三様の反応に、美琴は今度はクスッと笑みをこぼす。
「でも助かったよ、ありがとう」
＿＿また何かあった時はよろしくな。
自分に近い順に坂野上、灰崎、一星の頭をポンポン、と軽く撫でたのだった。
「……灰崎くん、満更でもなさそうだね」
「一星、てめぇにそのままそっくり返す」
「素直に嬉しいって言えば＿＿」
「嬉しくねぇ！！！」「全然嬉しくないです」
「……そこまで言うかよ普通」
「お、俺は嬉しいですよ！！」
「……ほんっとお前だけだよ、坂野上」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 571人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ロボッピ(プロフ) - 続きがすごく気になります。更新頑張ってください (6月30日 18時) (
レス) id: 932627b274 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2020年10月4日 3時
