色づいた優しさ ページ6
.
「悪いな、手伝わせることになって」
「いえ！」
「「……」」
美琴の言葉に返事をした坂野上、特に反応を示さない一星と灰崎、そして昨日までと変わらず無表情ながらも、幾分口数の増えた美琴。そんな彼らは、衣類やら布類が入った洗濯カゴをそれぞれ持っており、これから四人は洗濯干しを行うため横一列に並び、外へ向かっている途中である。
美琴は、返事のない彼らに「二人も悪いな」と再度声をかける。
「……ああ」
「……」
灰崎は小さく返事をしたものの、相変わらず返答をしない一星。
美琴と会話を楽しむ坂野上はともかく、明らかに彼を避けている灰崎と一星が、やむを得ず彼の隣を歩く事になった発端は、彼ら一年組が共同スペースで仲良く＿＿時に一星と灰崎の口喧嘩を挟みながら、各々の学校で出題された課題へと打ち込んでいた時だった。
三人の頭脳を併せ持っても解けない数学の発展問題に直面していた最中、偶然共同スペースへと現れた美琴。ドリンクサーバーで炭酸飲料を注ぎ終えた美琴から教えを乞い、何とか課題を終えた三人は、坂野上の「何かお礼でお手伝いします！」という発言によって現在の状況に。
「美琴さん、いつもこうやってマネージャーさんのお手伝いしているんですか？」
普段から、あまり練習場に顔を出す方ではなかった美琴の日常に対して問いかけた坂野上に、彼は「まあ、いつもマネージャーに任せっきりだしな」と眉を下げて答える。
「いつもお世話になってる分、休みの日くらい何かしてやれないかなって」
美琴は、意外と重さのあるカゴを抱え直し、目を細めて笑う。
「優しいんですね！美琴さんって」
「そうか？」
「……普段からそうなら良いのにな」
これまでの後輩やら同級生やらを揶揄っては楽しむ美琴を思い出しているのか、坂野上の隣を歩く灰崎がボソリと呟く。そして、彼の声が届いた美琴は「なんだヤキモチか灰崎」と洗面所で見かけることの多い、白いタオルばかりが入っているカゴを持った灰崎を揶揄う。
「は？」
「……いや、そんな怒んなくたっていいだろ」
＿＿冗談じゃねぇかよ。
予想以上に反抗の意を示した真顔の灰崎に、美琴は頬を膨らませる。すると、今まで黙っていた美琴の右隣を歩く一星が、漸くここで口を開けた。
「……彼女でもいるんですか？」
「お、一星。俺が気になるのか＿＿」
「いえ、全く」
「……なんかあたり強くないか お前」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 571人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ロボッピ(プロフ) - 続きがすごく気になります。更新頑張ってください (6月30日 18時) (
レス) id: 932627b274 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2020年10月4日 3時
