どこかの文豪ではない。ただそう思っただけ ページ18
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「かぐや姫を待ってるんですか？」
雪の降り積もった外気による冷えと人気のなさが相俟り、閑散さが満ちた廊下。
冒頭の落ち着いた声は、ふと視界に入った景色に美琴が足を止め、見つめていたところに響いたのだった。
＿＿こんな台詞が似合うヤツは一人しかいない。
「……やっぱり野坂か」
窓の向こうの情景を眺めていた美琴は突然掛けられた言葉に驚く様子もなく、寧ろ言葉の主を予想し得ていたかのように徐に振り返る。すると言葉の主＿＿野坂は小さく笑みを浮かべて会釈をし、美琴の元へ歩みを進める。
「やっぱりって何ですか？」すでに入浴は済んだのかラフなジャージを着こなした野坂は、フイと目を逸らした美琴と肩を並べる。
「お前らしいなって」
「そうですか？」
どちらも会話を続ける努力をすることもなく、淡々と言葉が交わされる。そして、美琴と同じように窓の外へ視線を向けた野坂は「実は美琴さんがかぐや姫だったりして」と先程の話の続きをするべく、月を映したままの瞳を細めた。
「そうだな、一度でいいから絶世の美女になってみたいもんだ」
「まあ、美琴さんは十分端正だと思いますけどね」
「……」
美琴は見上げていた夜空から視線を逸らし、隣に並ぶ桃色の髪の彼を見つめる。一方、見つめられた野坂はというと、美琴へと顔を向けて微笑する。
「思っていることを言っただけですよ」
「……それはどうも」
「ふふっ、本気ですよ？」
「はいはい」
お互いの類似した特性を認識しているのか、二人はどちらの言葉も本音として受け取る素振りをしない。
美琴は、相変わらずな野坂の様子に薄く笑みを浮かべた後「これから洗面所に行くけど野坂は？」と予定を尋ねる。すると「…すみません。この後鬼道さんとミーティングがあるので」と眉を下げる野坂。
「そうか」
美琴は僅かに目尻を下げると、その場で別れを告げるべく「じゃあ、おやすみ」と軽く手を上げて歩き出した。
「＿＿美琴さん」
しかし、再度声をかけられて足を止める。そして振り返った美琴へ、野坂は言葉を続けた。
「月、綺麗でしたね」
「そうだな＿＿月はずっと綺麗だ」
「……意味、知った上で言ってます？」
「さぁーな」
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小説本編でまだ関わったことのないキャラでしたので、準備運動がてらに描かせていただきました。
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ロボッピ(プロフ) - 続きがすごく気になります。更新頑張ってください (6月30日 18時) (
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作成日時：2020年10月4日 3時
