姉愛［39］｡憂鬱傷心｡ ページ39
焦凍side
今日はAお姉ちゃんの退院日。
お姉ちゃんが家に戻って来る。
また昔みたいに生活が出来る。
そのあまりの嬉しさに、小学校の入学式と言う大きなイベントが僕の中でかすれてしまっていた。でも仕方ないと思う。
｢……デカい校舎｣
校門をくぐり保護者に連れられる同級生を横目に、近くの中庭まで歩く。
ここがお姉ちゃんが通ってる学校。
お姉ちゃんもここに来たことあるのかな。
僕と同じ景色を見てたのかな………。
｢ねぇ見てあの子｣
｢うわっ。火傷？｣
煩いな。聞こえてるよ全部。
腫れ物みたいに指差して距離を取る周囲の人間。また嫌悪が募った。触れる度に失望する。人って言う存在にいつも。
皆皆、嫌いだ。皆汚い。
｢弟君んんんんん！｣
ギュウゥ!!
｢!!?｣
後ろからホールドされた。
髪の毛が猫みたいに逆立つ。
｢探したよ弟君！ Aちゃん大丈夫！？ 先生に聞いたんだよAちゃんが大怪我して入院したんだって！ もう1年以上も入院したままでしょ！？ まだ怪我治ってないのかなぁ!!?｣
コ、コイツ前に会った変人野郎！？
｢っ僕に抱き着くな暑苦しい！｣
僕に触れていいのはお姉ちゃんだけなんだ！
｢あっごめん！ 勢いよく抱き着き過ぎた？｣
｢勢いの問題じゃないから!!! 馬鹿なのアンタ！｣
思いっ切り顔を顰めて罵ればガーンと顔を青くする変人野郎。何かボヤきながら沈んで行った。
こんな変人の相手なんかしてられるか。
もうちょっとでAお姉ちゃんが来る筈。
校門で僕がちゃんとお出迎えしなきゃ。
｢あ！ ちょっと弟君待って！？
涼ちゃん置いてどこ行くのさー！｣
｢着いて来るな!!｣
｢Aちゃんのこと聞かせてよー！｣
しつこいあの変人!!
何であんな全体的に弱そうな奴が僕のAお姉ちゃんに馴れ馴れしくするのムカつく！
Aお姉ちゃんは誰にも渡さないからな!!
全速力で走り続ける僕と、しつこく追って来る水色髪の変人野郎。悔しいが6年生なだけあって僕より体力は上らしい。以外に足も早い。
本当にしつこい。
どっか行ってよ。
｢あっ｣
いつの間にか校門前に着いていた。
少し遅れて走ってくる背後の変人野郎は取り敢えず無視。見覚えのあるシルバーの外車に向かって大きく手を振った。
キラキラの笑顔を見せるように。
｢Aお姉ちゃーん!!｣
大好きなお姉ちゃんの名前を呼んだ。
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
