姉愛［256］｡瞬発咆哮｡ ページ6
焦凍side
｢ごめんね、気付けなくて、そんなに｣
｢だっ大丈夫ですよ！ こんなのすぐ治、つっ｣
身に走った痛みに顔を歪ませた緑谷。
｢……ごめん。障子もその腕｣
｢どうせ複製の腕です｣
｢痛かったでしょ｣
｢いえ、それほど｣
何とか持ち上げようと頑張っている障子だが、A姉の表情は曇るばかり。障子の尖った目尻が、困ったように平になる。凛々しい常闇も申し訳なさそうに俺達の顔を転々としていた。
あの爆豪ですら柔い眼差しでA姉を見つめている。
けれど、俺は違った。
どうしてそこまで。1人で全部背負い込むの。
と割とキツイ目でA姉を見てしまっていた。
いつもならこんな目を向けたりしない。
だってA姉は世界で一番の姉さん。
そんな愛する人に、こんな不躾な瞳はしない。
したくなんて、なかった。
｢ねぇ。A姉｣
｢焦凍…？｣
｢どうして頼ってくれないの？｣
俺が気付いていないとでも思ったの。
ずっと様子がおかしい。
いつもより不安定な弱々しい目だって、この敵襲撃だけじゃないんでしょ。他にも何かあるんでしょ。何年貴女と一緒にいることか。
分かるよ。俺はたった1人の弟だもの。
｢俺、たった1人の弟だよ…？｣
シャツの上から心を抑える。
｢頼ってよ、何があったか、吐き出してよ｣
｢！ ……｣
｢ねぇ、A姉。お願いだから…｣
目の奥がつんとしてきた。
A姉は逃げるように顔を逸らして、口許を震わす。
ほら。やっぱりそうだ。何かあったんだ。
そんなにまで震えるような怖い事が、あったんだ。
遭ったんだ。
｢………何も、ないよ｣
｢っ───｣
心に数千本の釘を刺し込まれた気がした。
何かが、プツンと切れたような気がした。
｢ある。よね、嘘だよ、そんなの優しさじゃないよ、嘘は嫌だよ、俺は全部ちゃんと言ってもらいたいのに｣
｢……嘘じゃない｣
｢だからっ…！ そんなのいらないって！ 言ってよ！ 気なんて遣わないでよ！ 家族でしょ！？ 姉弟でしょ！？ 皆思ってるよ！ 1人で抱え込まないで欲しいって思ってる!! 見てる方が痛いに決まってる!!｣
喉がきりきりする。
｢A姉のは優しさじゃない…!!｣
止まれ。
｢そんなのはっ、そんなのはただの…｣
やめて。
｢ただの！ 独り善がりだよ!!!｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1743人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
