姉愛［275］｡戦慄暴走｡ ページ25
個性side
ギィ、とブランコが軋む。
あの時から何10年も色褪せない公園で今日も今日とて暇を持て余していた。近頃Aの精神状態があやふやで脆くて、心配していた。
そろそろその日が来てしまうか。
と悟っていた。それが今。
｢…やぁ。A｣
君がこの世界に居るということはそういう事。
あーぁ、駄目だなぁもう。泣きそう。
僕は精一杯僕を殺して今まで過ごしてきたのに。
オールフォーワンはそれを意図も簡単に壊す。
｢君が、私のもう一つの個性？｣
｢うん。時々話しかけていたんだよ。聞こえてたでしょう？｣
なるべく柔らかく微笑んだ。
するとAったら、無表情で頷くんだもの。あるかさえも分からない心が一刀両断されたのかと錯覚してしまった。
僕は君を守れなかった。
結局、こういう末路を辿ってしまうんだ。
｢流石に親友二人の血みどろの姿は耐えられなかったよね。ごめんねA。見ちゃダメって声をかけようとしたんだけど、何故だか通じなくてさ｣
腰を上げてブランコを四角く囲む柵まで歩いた。
そのすぐ向こうに立っているAに近付くため柵に触れる振りをする。すぐに彼女の赤髪を手ですいた。
睡蓮のような甘い香りがした。
｢ごめんね…ごめんね、A｣
｢……どうして君が謝るの？｣
｢だって僕さえいなければ君の身体はっ｣
｢違うよ。君は悪くない。私は大丈夫｣
言ってる割に目が冷たいよ。
顔なんて、無にも程があるよ。
悲しい…きっとAはもう。
｢暴走が始まる…｣
オレンジの世界に黒い雨が降り注ぐ。
力なく漆黒に染め上げられていく、その様を僕は呆然と見つめるしかなかった。
いつも以上に寒いなぁ。
凍てつくような空気が僕らを蝕んでくる。
｢この黒いのは…？｣
｢僕自身であり君自身、かな｣
｢よく分からないね｣
｢要するに狂気的な個性ってやつだよ｣
無理矢理に笑って、Aの頬を撫でた。
死人のように冷え切っている。その体温に感化され僕の悲しみが雫となって溢れ落ちた。
こんなに苦しいのは初めてだ。
｢行ってらっしゃい｣
真っ黒に包まれていく。
｢A、負けないでね。どんなに苦しくても諦めちゃ駄目だからね。きっと誰かが助けに来てくれるから｣
視界がぼやけて遠のく。
｢だから、もう会うことは出来ないけど｣
Aの瞳からも、涙が一滴だけ流れた。
｢救世主を…ちゃんと受け入れてあげて｣
真っ黒が世界全てを呑み込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1743人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
