姉愛［266］｡間違告白｡ ページ16
梛side
｢馬鹿ぁ!!! 独り善がりになって何が楽しいのさ！ 誰が得するって言うのさ!!｣
重い足を無理やり運ぶAさんの背中に、幼児みたいに叫び散らしては大粒の涙を落としまくる。さっきまでの無表情はどこへ行った。
いつもなら突っ込みを入れるのだが、勿論今の俺にそんな余裕はない。
留まってもらおうとAさんの腕を掴んだ。
｢…行かないで下さい｣
｢やだ｣
｢二人ともきっと戻って来ます。Aさんが無茶をする必要は無いんですっ｣
｢……あるよ｣
｢無いですって！｣
｢ある、から｣
頑なだ。ここまでなんて。
スイッチが切れたみたいに泣きじゃくり出した涼羽はもう使い物にならなさそうだ。ああなれば唯の赤ん坊。
Aさんを振り向かせることが出来なかった、救えなかった自分が情けないのだろう。
親友の今の心情が手に取るように分かった。
俺も同じようなもんだった。
Aさんは一切、俺を見てくれない。
｢行っちゃ駄目です！ 駄目なんです！｣
｢っ…煩い、私が｣
｢どうしてそうなんですか!! 俺達がここにいるじゃないですか！ どうして…！｣
あれ、違う感情が立ち上がってきた。
駄目だ待て。
これは違う。
これは関係ない。
｢西宮の方がいいんですか!!? 爆豪の方が大切なんですか…！？ 俺は、俺が今目の前にいるのに、どうして、見てくれないんですか…っ！｣
今、この秘密の感情は、いらない。
言うべきじゃない。
｢貴女のことをこんなにも好きな俺は、所詮は犬の俺は、嫌いですか……？｣
──言って、しまった。
｢…………｣
案の定Aさんの目が丸くなる。
けれどすぐに、虚ろに戻ってしまった。
俺の手を柔らかく振りほどく。
｢………｣
歩いて行く。
嫌、行かないで。
｢待って……！｣
行ってしまったら。
俺は、俺の心はここで終わってしまう。
行ってしまったら。
貴女はもう帰って来ないかも知れない。
そんなの、そんなの嫌だ。
｢行かないで下さい…っ｣
扉が開いてしまう。
右足を踏み出してしまう。
｢Aさん…!!｣
貴女が、行ってしまった。
ガクっ。膝から崩れ落ちる。
｢うあぁぁあAちゃんの馬鹿ぁぁ…なっちゃんの馬鹿ぁぁ…！｣
鼻水まで垂らしてはしたなく喚く。
耳障りな涼羽の声の中に、低い嗚咽が混ざって聞こえた。その低声も情けなかった。
誰だ、病室でわんわん泣いてる奴は。
｢うぁっああぁ……っあぁ｣
嗚呼。俺だ。
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
