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Aside
傘にボトボトと大きな雨粒の当たる音。
雨は大嫌い。濡れるし、髪はうまくまとまらないし。
何より空が死んでる。
だけど、この雨音は好き。
耳を占領する、この音。
一定のリズムでずっと続いてる。
ただ、降るならせめて休みの日にしてほしい。
やっぱり冬の雨は寒い。
こんな日に徒歩で会社に行こうとするのがバカだった。
濡れた足元から身体全体が冷える。
「キャンキャン」
、、？
何？今の音。
突然聞こえた高音に思わず立ち止まって振り返るけど、誰もいない。
幻聴？
「こわっ、、」
「キャンキャン」
いや、やっぱり聞こえる。
、、前？
ゆっくりと歩き出し、角を曲がって見えた、ダンボール。
「あ、、」
反射的に駆け寄り、雨に打たれている目の前の子犬に傘をさした。
君だったのね。
あまり犬には詳しくないけど、分かる。
たぶん、トイプードルって種類。
テレビでよくみる、もこもことした茶色い毛に、クリクリの瞳。
捨て犬、なのかな。
本やドラマでしか見たことのない状況に、ちょっと焦る。
「かわいいっ。」
そんな泣きそうな瞳で見ないで。
背中が濡れていくのも忘れて、目の前の天使と見つめ合う。
どうしよう、会社に遅れる、、
でも、見捨てることもできないし、、
「ごめんね。」
私まで泣きそうになるけど、会社に連れて行く訳にも行かないし。
傘だけ置いて、行くことにした。
また帰りにでも寄ろう。
その間に誰か拾ってくれる人がいるといいんだけど。
じゃなくて、
傘がないんだからダッシュで行かなきゃ。
「よし。」
「待って！！！！」
うおっ、、
勢いよく踏み出したところを誰かに呼び止められ、危うくコケそうになった。
声の主を確認しようと振り返る瞬間、私に当たっていた雨が止んだ。
「え？」
いつのまにこんなに接近していたのだろうか。
目の前には、息を荒げて私を見つめる、男の人。
「え、あの、
どちら様ですかって、言おうとしたのに。
「これ、使って。」
「、、、は？」
「傘。ずぶ濡れで行くつもり？」
「いや、でもっ、、
「いいから！ほら、急いでるんでしょ？」
「あ、ありがとうございます。」
彼の一言でハッとして、一言お礼を告げて走り出した。
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作者名：ちーず | 作成日時：2019年11月21日 21時
