その少女、招待 ページ4
『……ぅ、ん……』
義姉さまがナイトレイブンカレッジへ向かって早数ヶ月。
いつものように物置で寝ていた私の耳に、こんこんと静かなノック音が届く。
音は、部屋にある小さな窓からしているようだった。
私は目を擦りながら窓を開ける。と、いきなり黒い仮面が現れた。
「あぁ、やはり此方にいらしたのですね!」
『きゃっ!?』
驚いた私は、天井に頭をぶつけてしまう。慌てたように仮面さんが私に話しかけた。
目が覚めたら私は急いで枕元に置いてあった仮面をつける。……醜い私を隠してくれる、大事なもの。
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたね。……私の名前はクロウリー。ナイトレイブンカレッジで学園長をしています」
『……あぁ、義姉さまが通うことになったところですね。それで、私に何の用でしょうか』
「それが、ですねぇ。……貴女のお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか」
『あ、私はA・エラと言います』
私がそう言うと、クロウリーさんは「やっぱり……」と呟く。
その神妙な面持ちに首を傾げると、クロウリーさんが慌てて手を振った。
「いえ、此方の話なんですけどね。……さて、今日は貴女をナイトレイブンカレッジに招待しに来たんです」
『……招待?私を?』
「えぇ」
そう言ってクロウリーさんは笑う。……でも。
『ごめんなさい』そう言って私は頭を下げた。
クロウリーさんが目を見開くのが分かる。
『……私のような醜い者は、学校へ通ってはいけないのでしょう。義母さまも、義姉さまもそう仰っていたわ』
「なるほど。……かなり洗脳が進んでいるようですね。これはまずい」
クロウリーさんは顎に手を当て、何やらぶつぶつ呟き始める。
かと思えば、私を見てにっこりと微笑んだ。
「……貴女はどうしたいのですか、Aさん」
『……どう、したい?』
「このような暗くて狭い場所で一生過ごすのですか?外へ出て、伸び伸びと生活したいとは思わないのですか?」
『……外。……行ってみたい、です……』
「なら決まりでしょう。……外へ出てきてくれますか?」
私は寝巻き姿のまま、物置を抜け出す。
深夜ということもあって、義母さまと義姉さまは寝ているようだった。
『……ごめんなさい、でも』
私は、外へ行ってみたい。
その日、義母たちの憂さ晴らしの道具は姿を消した。
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Akal(プロフ) - まだ途中までしか読んでないけど…マジで夢主ちゃんとキャラ達和解してほしい…!義家族許せないわ、これは。夢主ちゃん大体悪くないのに… (2023年3月29日 16時) (レス) @page25 id: 5bb5794148 (このIDを非表示/違反報告)
森。(プロフ) - 何度も読み返したくなり戻って来ました!何度読んでも涙が出てきて…これ程までハマった作品は初めてです!完結おめでとうございます! (2022年11月2日 7時) (レス) @page1 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
ロナ - イラつきます。 (2021年10月30日 13時) (レス) @page37 id: db59ef0184 (このIDを非表示/違反報告)
こうめ - えっ、小説で初めてガチ泣きしたんだが?!!好きです!! (2021年4月14日 0時) (レス) id: cfffb34543 (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - カリムくん優しすぎて私まで涙ちょちょぎれてましたうわぁぁん(T_T) (2020年11月25日 23時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2020年9月18日 16時