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19話 ページ21

「困らせてごめんなさい。こんなん言われても困りますね。練習行くんでもう大丈夫ですよ。」

そういってひどい顔のまま立ち去ろうとする彼の腕を気づけば掴んでいた。

『ねぇ、どうせ練習するなら私もこれから練習の続きするから付き合ってよ。』

そのまま練習室に入ってさっさと音楽をかける。二人で踊っていると少しずつ酷かった顔が和らいでいつものイケメンな顔が戻ってきた。でもどことなく思い詰めたような表情だけはずっと残ったままで、一曲終わった後一旦音楽を止めた私は、ちょっと低い位置にあった彼の頭を軽く撫でた。

『あんな思い詰めたひどい顔で言ってきた人とは思えないくらい踊れてるんだけど…、びっくりしちゃった。』
「え、そうですか?」
『うん。十分戦えるよ、大丈夫。それでも不安なら私と一緒に練習しよう。』
「え、いいんですか?俺Bクラスやけど…。」
『良いんだよ。今日…っじゃなくて昨日の午前中はね、ずっとBでダンス教えてたんだよ。』

すっかり元に戻った彼の顔を見た私は、もう一回音楽をかけて一緒に教えながら踊った。ちょっと教えたらみるみるうちに動きが改善していく彼に私はびっくりした。

『良いじゃん、飲み込み早いね。どんどん上手くなるから教えがいあるよ。』

なんてテンションに乗った私は調子に乗って細かいところまでガンガンに詰めていく。気づけば5時を迎え外は明るみ出していた。

『ごめん。つい楽しくて…睡眠時間足りないよね。大丈夫?』
「全然!今日と明日は寝ないつもりやったんで!むしろずっと教えてもらってたんでむしろありがたかったです!」
『それはよかった。じゃ、今日も頑張ろうね。明日のテストでA取れること祈ってるよ。待ってる。』
「はい。待っとってください。本番一緒のステージに乗りましょう。」

別れた私はお風呂やスキンケアなどに時間をかけているうちに結局一睡もしないまま三日目を迎えた。

…そして、朝から梓ちゃんの練習を見ていたら、Fクラスにダンスを教えることになっていた。昨日のデジャヴを感じつつも練習していると、今度は雫ちゃんに呼ばれDクラスを教えることになった。そうして私は全クラスでダンスを教えていた。それは最後のレッスンが終わり個人練になった後も続いた。
多分、私のお節介な部分が一人で苦戦している人を見るとついつい教えに行ってしまうのだ。

『みんな、ランクは下げない様に頑張って。できることなら全員Aおいでね。』

集めた女子練習生全員と約束した。

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作者名:おおはら | 作成日時:2021年10月7日 14時

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