空想男子アディクション【ars】 (ページ37)

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「俺がやっちゃったと思ったのは、居眠りした事だよ。TV見逃した事じゃなくて！」

ムギュムギュ、摘まれ続けるほっぺ。

「だって、今何時？」

訊かれてチラッと壁の時計を見上げる。
雅紀くんの部屋にある時計は、お洒落すぎてちょっと読み辛い。

「あーもう、5時だし...。せっかく一緒にいれたのに」

私のほっぺを開放して、ジンジンしてるそこを今度は大きな掌で包んでくれる。

「Aちゃん、この後って仕事でしょ？」
「うん、6時から遅番」
「あと1時間しか一緒に居れない...」

ガッカリって感じで、雅紀くんがつまんなそうな顔をした。
それが、社交辞令ってゆーか、お約束的なもんなんだとしても私はやっぱり嬉しくて、ムフッとなっちゃう。

雅紀くんが休みで、私も休みならどこかに出掛けるんだけど

今日みたいに、雅紀くんは休みだけど私が夕方から仕事の時はどっちかの家でのんびり過ごすのが定番。

今日は雅紀くんちに昨日から泊まって。
お昼ご飯にたらこパスタを2人で作って食べて、お腹いっぱーいって床に転がった雅紀くんはそのまま寝息を立て始めてた。

それに対して、別にムカついたりはしない。
だって、彼は軽ーい人に見えて人気セレクトショップをを任されてる店長さん。
疲れてるのは当然。

寂しいとも思わない。
だって、雅紀くんの寝顔はトンデモナイ。
天使。三十路の天使。
その寝顔を見てるだけで、充分って思えてしまうから。

「ねぇ、Aちゃん。仕事、休む？」
「休みません！」

むぅ...ってなってる雅紀くんのおデコをピシッと叩いて私は立ち上がった。

このまま彼の前に座ってると、本当に仕事休んで雅紀くんと一緒に居たくなる。

「雅紀くん、冷蔵庫開けるね」
「うん、どーぞ」

冷蔵庫を開けて買い置きしてあるレッドブルを出すと、「あっ！ちょっと待った！」って彼がキッチンまで走って来て

私の腕をガシッと掴んだ。

「えっ！？何っ！？」
「飲んじゃダメッ！」
「えっ！？賞味期限切れてる！？」

慌てて缶をグルグル回して上からも下からも見てしまう。

「違う違う！」

そんな私から缶を取り上げた雅紀くんが、フゥって息を吐く。

「Aちゃん、ニュース見てないの？」
「ニュース...って？」
「もー。ちゃんと世間の流れについてかなきゃダメじゃん」

雅紀くんは時々

ホント、時々なんだけど

歳上っぽくなる。あ、実際歳上なんだけど。