空想男子アディクション【ars】 (ページ18)

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膨大な選択肢から貴方が厳選したいくつかの家に、実際足も運んだ。

家の中だけじゃ無く、周りの環境もチェック。
何だったら、昼間と夜間で二度チェック。

「昼間は静かでも、夜になったら若者がうるさい町ってのもあるからね」

翔さんは腕を組んで厳しい目でチェック。

お母さんみたいな(翔さんは「お父さん」ってより「お母さん」って感じ)その厳しい目も、私にとっては頼もしい。

キョロキョロしてる翔さんに「スーパーでも探してるんですか？」って訊くと、「......幼稚園とか、小学校...」って少し恥ずかしそうに答える姿に

もう私、何だか泣きそうになってる。

「あ、あった！幼稚園。可愛いー、ほら見て！」

可愛いキリンさんのアーチを指差して笑う貴方の隣に、まだお腹にも存在してない我が子を想像したら胸がいっぱいで

思わず、手をキュっと繋ぐ。

「Aちゃん...？」
「お腹、減りましたね！」
「ハハッ！ホント、食べるの好きだよね」
「翔さんもでしょ！」
「共通の趣味は食べ歩きだもんね」

アハハッ、って眉を下げて笑う貴方の笑顔を見れるなら

私はもう、ホント、テント暮らしでも良い。

割と本気で思ってるんだけど、言わない方が良いよね。
引かれたら嫌だから。

「美味しい店が家の近くにあるってのもポイント高いよねー」

翔さんは、ほっぺたをリスの頬袋みたいにしてモグモグと豚カツ定食を食べてる。

「美味しいお店がいっぱいあったら、私は料理せずに済みますね」
「それは別問題！俺は、Aちゃんの手料理も食べたいんだから！あ、でも仕事しんどかった時とか無理して作らなくって良いからさ」
「...翔さん...」
「そーゆー時の為に、美味しいお惣菜屋さんやお弁当屋さんも近くにあったら良いなぁ」

別に私を喜ばせようと思って言ってるんじゃないっぽいその台詞が、世の中のお嫁さんの負担をどれだけ軽くしてくれるのか、きっと翔さんは分かってないだろうな。

天然に優しいんだから、困るし参る。

「Aちゃん、さっき見た家どう思う？」
「翔さんは、どうですか？」
「えー？質問返しー？」
「フフッ、どうですか？」
「俺は結構良いと思ったかな。すっげぇ明るかったし」

私が一番譲れないと思ってた条件が『窓が大きくて、明るいコト』だって、翔さんはちゃんと気付いてくれてる。

「私も、良いと思いました」
「ん。だと思った！」

そう言うと、彼は満足そうに頷いて豚カツをパクっと頬張った。