空想男子アディクション【ars】 (ページ17)

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■空想リアリティ【S】ページ17

リビングに南向きの大きな窓があって、昼間は電気を点けなくても良い位明るいのが良い。

できれば近くに格安スーパーがあって、コンビニは...いらないかな。
無駄遣いしちゃうから。

料理は苦手だから独立キッチンが良いんだけど、貴方が対面カウンターキッチンが良いって言うなら私は頑張って手際良く料理できるように頑張るからね。

部屋は3つはあった方が良いかな？

二人の寝室、貴方の書斎、それと増えるかもしれない家族の為に。

それからそれから...

でも何か、別にもう何でもいいや。
どんな家でも、全然構わない。

例えば、窓から隙間風が入って来ても

例えば、給湯器の調子が悪くてシャワーがたまに水になっても

例えば、近所の野良猫がしょっちゅうエサをねだりに来ても

貴方と暮らせるなら、どんな家でも。

貴方と、同じ苗字になれただけで私はもう充分に幸せだから。

・

私が並べた理想を叶えるべく、貴方はしょっちゅう仕事終わりに不動産屋さんを訪ねてくれた。

週2、位のペースかな。

帰って来る度に、たくさんの間取り図を手にして「この家はここが良いんだけど、これがなぁ...」とか「ここはね、俺的には結構及第点！」とか

リサーチ好きな貴方は、とても楽しそうで

それを見てるだけでも、私は頬が緩んでしまう。

「翔さんの好きなお家で良いですよ？」
「駄目だって！一緒に暮らすんだから」
「フフッ。はい」
「でね、この家は近くに良いスーパーがあるんだってさ！」

間取り図を見ながら、貴方との未来を夢見る。

「でもさぁ、俺的には賃貸も良いけど買っちゃっても良いかなって思ってたりもする」
「分譲ですか？」
「うん。だって、一生一緒に暮らすんだし買っちゃって問題無いでしょ？」

その『一生一緒』って言葉が、それだけ私の胸をキュンとさせたかなんて気付いても無い翔さんは

「ヤッベ！分譲も入れたら、選択肢が広がり過ぎる！」

なんて、全然ヤバいとは思って無さそうな顔で笑う。

「どうしよっか、Aちゃん！」
「フフフッ、どうしましょっか」
「いやぁ、やっぱもうここは主人の懐のデカさ見せちゃうかー！」

『主人』だって。

「うちの主人が」って人に話すのが夢だったんだよ？
知らないでしょ。

「ちょっとネットで調べてみる」

私の『ご主人様』がウキウキした足取りで、PCの前に座って

分譲マンションを検索してる背中を見てる私は

ねぇ、きっと世界一の幸せな奥さんだと思うんだよ？