空想男子アディクション【ars】 (ページ16)

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こっちおいで、って智くんに背中を押されてベランダに出る。

そして「あれ、見て！」って彼はマンションの下を指差した。

「...え...嘘でしょ？」
「嘘じゃないよ」
「幻？」
「本物ぉ」

智くんが指差した先にあったのは、冗談みたいに大きなリボンを巻かれた

車。

え！？なんで車にリボン！？
あんなでっかくて長いリボンはどこで売ってるの！？
ってゆーか、どうやって巻いた！？

いや、違う！そこじゃない！
車！？
何で車！？

「さっ...さとっ...！？」
「ん？」
「何っ...！？あれ！！」
「あ、リボン？あれねぇ、相葉ちゃんと布屋さん行って大きな布買って切ってぇ、縫ってぇリボンにしたの」

まぁ、そこも気になってたけど！

「そんで、相葉ちゃんが巻くのも手伝ってくれた！背が高いからヒョイヒョーイって巻いてくれたよぉ」

うん、それも気になってたけど！

「あれが...プレゼントって...本気で？」
「大作さんの車に比べたらショボボーンだけどねぇ」
「ショボくない！めっちゃ可愛いよ、あれ！」

上から見たって分かる。
前に、隣の車線を走ってるのを見て私が「可愛いなぁ」って言ったことのある車種だもん。

「はい、これ本物ね。あ、あんまり乗り出すと落ちるから気を付けようね」

もう半泣きで下にある車を覗き込んでる私の腰を支えた智くんが

本物の車のキーを、目の前でブラブラさせた。

「乗ってみる？」
「乗ってみる！」

2人でマンションの下に降りて、まずリボンを外す。

すごい大変。
大仕事。

外したリボンを後部座席に突っ込むと、智くんが運転席のドアを開けてくれた。

「どうぞ」
「...うん」

私が乗り込むと、智くんも助手席に乗る。

「ねぇ、本当に良いの...？車くれるって、もうそれパパの域だけど...」
「でも、みんな自分の車買ってるでしょ？それがおれはAちゃんにあげるってだけだし」
「私、いっぱいアッシーするからね！」
「Aちゃんはアッシーじゃないよぉ、もー何言ってんのぉ」

楽しそうに智くんが「あ、これもあげる」って封筒をくれた。

中には一枚のカード。
私の似顔絵の横に『これから何度もおめでとう』って描いてある。

「毎年、あげる」
「......」
「おれが何度も、お祝いしてあげる」

あぁビックリ。
人って嬉しかったら、こんなに涙が出るんだ。
サプラーイズ。

「今年のお誕生日おめでとう」

貴方の唇が、頬に触れた。

・・・END『サプライズ・パラダイス』・・・