明日の天気の話をしよう 7th【ars】 (ページ6)

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216.オススメ。ページ6

相葉くんが元気な笑顔でホールをパタパタと駆け回ってる事よりも、澄ました笑顔でエントランスに立ってる事に慣れて来た頃

ディナー勤務で桜に入ると、ランチだったのか私服のミワちゃんと、制服姿の相葉くんがレジの前で立ち話をしてた。

「あ、二人ともおはよー」

私が言うと、二人がこっちを見る。

「Aちゃん、おはよ」
「おはようございます！」

外に出たら巻くつもりなんだろうフワフワのストールを胸の前にギュッと抱いてるミワちゃんが、照れ臭そうに笑った。

「Aちゃんも好きだよねぇ？」

突然相葉くんに振られて、「何が？」って返すと「サトシ」って言われる。

一瞬『三十四』なのか『智』なのか分からない。

「好きだけど...どっちのサトシ？」
「アハッ！どっちのって！智の三十四！」
「あぁ！智さんのラーメン屋さんね！うん、好き好き。何で？」
「今、ミワちゃんにオススメしてたの」

ねぇー、って首をコテンと傾けながら相葉くんがミワちゃんに微笑む。
ボッて音が鳴ったんじゃない？って位に彼女のほっぺが赤くなって、私が何故かニヤけちゃう。

「三十四、行ったこと無い？私も教えて貰ったんだけど美味しいよ！」
「そうなんですか！気になるなぁ」
「オススメだよ、店長さんも良い人だしプリン美味しいし」
「プリン？ラーメン屋さんですよね？」

ミワちゃんが目を丸くする。

「ラーメン屋さんだけどプリンが美味しいの！行ってみて！」
「はいっ！あ...でも一人じゃなぁ...」

うーん...と考えてる彼女に、私と一緒に行こうかって言おうと思った時

「じゃあ、俺と一緒に行く？」

先にそう言ったのは、相葉くんだった。

「えっ！？」

持ってたストールをボトンと落としたミワちゃんが口をパクパクさせてる。

「ホント美味しいから、おーちゃんのラーメン！」
「あっ...あのっ...」
「今度、一緒に上がれる時に行こうね」
「......あっ！じゃあ、Aさんもっ！」

勢いよくこっちを見た彼女に、私は「あー、私が一緒に上がれる日って暫く無かったと思うから二人で行って来て！」って、ちょっと残念な顔を作ってみた。

「そう...なんですか...？」
「多分？無かった気がする、違ったかな？シフト覚えてないんだよね」

適当に言って笑った私に、相葉くんも笑ってレジから出て来る。

「ミワちゃん、いつにしよっか」

落ちたまんまだったストールを拾って渡す相葉くんに、ミワちゃんは「いつでも...」って小さな声で応えた。