明日の天気の話をしよう 7th【ars】 (ページ18)

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228.手。ページ18

「二宮くんはこけないでしょ...」
「そ？Aが知らないだけで、ちょー運動神経悪いかもよ？」

クフフって笑ってるけど、そんな訳無い。

だって、クロの散歩に付き合ってた帰りに競争した時、二宮くんは引くほど走るの速かった。
あんな俊足な人が運動神経悪いんだったら、私なんて亀だ。人間でも無い。

「もし二宮くんがこけても、私助けられないよ。一緒にこけると思う」
「巻き込み事故じゃん」
「危ないから、やっぱコレ離した方が...」

繋がれっ放しの手が恥ずかしくて

ってゆーか、このまま繋がれてたら私の気持ちが腕を通って伝わっちゃうんじゃない！？なんて馬鹿な事を結構真剣に考えてしまって

離して欲しがってるようにわざと軽く手をブンブン上下に振ってみる。

「じゃあオレ、こけないように気を付ける」

だけど、二宮くんは余計に手をギュウって握って来て

「でも寒いし、手はこのまんまで良いでしょ？」

そんな風にサラリと言うんだ。

「今日はどっちかと言えばあったかいと思うんだけど...」
「フハッ！あーもー、うるさいね？あー言えばこー言う、ってAみたいなコトを言うのよ？」

そうだな、と思う。
可愛げの無い女だ、と思う。

でも自分の想いに気付いたからって、突然「うん、さむいよねぇ。あっためてほしいなぁ(はぁと)」なんてニッコリ微笑むようなキャラ変出来ないし。

「そんなにヤダ？これ」

二宮くんが『これ』って繋いだ手を、私の目線まで持ち上げる。

「......ヤダって言うか...」
「納得できる理由が無きゃ、ダメ？」
「......」
「ま、『こけそう』も『寒い』も嘘だから納得なんか出来ないか」

目線の位置にあった手を下げて、またユラユラと揺らしながら歩く。

坂道を下る。

まだまだ続くこの道が、終わらなければ良いと、思う。

「手、繋ぎたかったから。それだけ」

あんまり抑揚の無い声で言われたその言葉に、ドキドキしてた私の胸はドンッ！と拳で殴られたみたい。

「Aに触りたいなーって思ったの」
「...言い方が変態っぽい」
「オトコはみんな変態だぞ？全員だ、全員。全男子変態」

んなワケあるかいっ！って、突っ込みたいのに上手く言えなくて

「...バーカ」

私から出たのは、蚊の鳴くような情けない声。

それが聴こえたのか聴こえてないのか、二宮くんはンフッ笑うと

「ヌクヌクだな、Aの手」

ギュッギュッて、握られて

私の心臓もギュッギュッて、縮んだ。

...なんて、乙女チック。