明日の天気の話をしよう 7th【ars】 (ページ13)

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223.その通り。ページ13

出会う、って言ったって色々とあるわけ。

言ってみれば、潤さんに出逢ったのなんて本当に運命的だと言ってしまえばそうなんだし。
私が道を完璧に把握してれば交番に行く事なんて、無かったんだし。

それに智さんだってそう！
桜で働いて無かったら、もしかしたら知らないまんまだったかもしれない。
桜って言えば、あの二人だってそうだし...ロマドーに来てなかったら、出会ってなかった。

って事は、社長が逃げて無ければ

カフェが潰れてなければ

私はここの誰とも会えなかったんだ...。

「二宮くん、その通りだわ...」
「ん？」
「私、初めて夜逃げ社長に感謝したかも」
「ンフフ、オレに会えて嬉しいって事ね？」
「ってゆーか、ロマドーに来れて良かった」

二宮くんは相変わらずゆるーく笑ってる。

「そろそろ帰る？クロも退屈そうになって来たし」
「うん、そうしよっか」

伝票を持って席を立った二宮くんが「A、クロお願い」ってクロのリードとキャリーを私に渡して、レジに向かった。

慌てて追いかけると、私の分まで出してくれてる。

「あ、ちょっと待って、今財布出すから...」

でもリードやら何やらで私の手はいっぱいで、なかなか自分の鞄を開く事が出来ない。

しかもクロのテンションが突然上がって、開いてるドアの方に向かって私をグイグイ引っ張る。

「あぁぁぁ！クロ、ちょっと待って！あっ、二宮くん！私、いくら払えば良いっ！？」
「フハハッ！うっせぇよ、A！」

クロに引っ張られながら叫んだ私を、二宮くんは可笑しそうに笑って

「ねぇ？ホントあの人うるさくて。ボク参っちゃいますよ」

レジの可愛いお姉さんに、ンフッなんて微笑みながら言っちゃってる。

そこ！そーゆートコが小悪魔だって言ってんの！

「お待たせー。あのレジの子もチワワ飼ってるらしくて、ちょっと盛り上がっちゃった」

さっさとクロが出て来てしまったせいでお店の前で待つ羽目になった私に、二宮くんはまたンフッて笑う。

「あ、そうだ。お会計いくらだった？」
「あー、別に良いよ。この店、教えてくれたお礼」
「良いの？」
「うん。誘ったのもオレだし」

そう言いながら、私の手からリードを受け取る。

「ごちそうさまです、ありがと」
「ん、また付き合ってくれる？」

一瞬だけ目が合って、すぐ目を逸らして

うん、って声を出さずに頷くと

二宮くんも、うんって頷いた。

空は、もうすっかり暗くなっていた。