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セーラー戦士が12人 ページ12

会場に優しく流れるクラシック音楽。
硬い靴の音と雑踏から逃れるように、私は部屋の隅に居た。
和子さんは常に私の視線の先に居て、不審な人物が和子さんの近くに居ないことを確認していた。
傍に居ても良いのだが、この大人数の中、私が和子さんの護衛の為に呼ばれたと知られるのは分が悪い。
招待客がその事を知らなければ、の話だが。
さすがにこの大人数を相手にすることになれば、だいぶキツい。
どうしたものか、と考え込んでいると、ふいに声をかけられた。




「そこの美しい方、私と一曲、どうですか?」

「申し訳ありませんが、お断りさせて…」




「…太宰くん」




私の目線の先に居たのは、タキシードを身をまとう太宰くんだった。
相変わらず何を着ても様になる、と彼の風貌に見とれていたが、肝心の疑問を思い起こして私は彼に問うた。




「どうしてここに居るの…?仕事は?」

「相変わらずつれない方だ。勿論、Aさんに手を貸しに来ました。仕事は二の次です」

「まずは自分に与えられた業務を優先しなさいよ…」




怒鳴る国木田くんの姿を思い浮かべて、頭痛がした。
ため息混じりに言うと、太宰くんはいつものように笑みを浮かべて、上機嫌で言った。




「まあまあ、そんな事は忘れて、私と踊りませんか?」




太宰くんは私の手を引き、抱き寄せた。
突然のことに私が戸惑っていると、耳元でコソッと囁いた。




「なにをっ」

「先程から一人でしたでしょう?目立ちすぎていました、このままだとそろそろ怪しまれていた頃でしょう」




その言葉に私はハッとした。
太宰くんの背中ごしに見る人々は、私を怪訝な表情で視線を寄越していた。
嘘でしょ、こんなことにも気づかなかったなんて…!




「…ありがとう、助かったわ」

「礼には及びません。私はAさんの手扶けに来たのですから」

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作者名:くゎじゅ | 作成日時:2021年1月28日 21時

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