其ノ陸 上弦の陸 ページ7
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夜明け前、上弦の陸に会おうと吉原についた。
ここは嫌いだ、絶望を覚えた嫌な思い出しかない。
「何ビクビクしてんだい」
『あ!堕姫さま!』
遊郭から出てきてくれた彼女に思わず抱きついた。
「あんたを苦しめた楼主と内儀はアタシが殺したから大丈夫。
Aをいじめた人間は一人残らず帯に閉じ込めたから心配しなくていいんだよ」
『うん……』
「まったく人間って弱いねえ、昔のことをうじうじ考えるんじゃないよ!
顔をあげな、あんたは美しいんだから!」
励ましてくれた堕姫さまはわたしの手を引いて部屋に入れてくれた。
「お兄ちゃん、Aが会いたいってさ」
「うぅぅん……なんだぁぁ」
堕姫さまが呼びかけると、彼女から分離するように現れた妓夫太郎さま。
『お久しぶりです、妓夫太郎さま』
「1年ぶりだなぁ、どうしたんだ」
『最近上弦の皆さんに会えてなかったから会いに来たんです!』
「そうかぁぁ、相変わらず妬ましいほど美人だなお前は」
「なに褒めてんのよお兄ちゃん!
アタシの方が美人に決まってるでしょ!」
「そりゃあお前が1番にきまってるだろぉ?」
「ふん!当たり前よ!」
その後、堕姫さまが口直しの血が欲しいと言ったので少量血をあげた。
『妓夫太郎さまは?』
「うぅん、お前は食いたくねぇんだよぁぁ」
『どうしてですか?』
「さあなぁ」
「もったいぶってないで食べたらいいのに。
Aがどう?って言ってるんだから」
「いいや、俺はいいんだ。
堕姫、そろそろ夜が明ける。お前は仕事の時間だ。
Aは俺が送ってくる」
「早く帰ってきてよね、お兄ちゃん!」
「……分かってるよぉ」
外に出るとだいぶ空が白んできていた。
「Aも鬼になれたらいいのになぁぁ」
妓夫太郎さまはぼそりと呟く。
「そうしたらお前が年老いて醜くなることもない。
お前が死ぬという恐怖もなくて済むんだけどなぁ」
『うふふ』
「なんで笑ってんだぁ?」
『私が死んだら寂しいって思えてくれる方と出会えてよかった。
どうかわたしが死んでもわたしのこと覚えててくださいね』
「……ああ」
『それではまたお会いしましょう、ここまで来れば大丈夫です』
吉原の外まで連れてきてくれた彼に礼を言い、わたしは黒死牟さまのいる場所まで足を運んだ。
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ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時