其ノ参 上弦の弐 ページ4
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「今夜は…どうするのだ?」
『この後童磨さまの元へ参ります』
「そうか…もう行くのか…」
『明日は一日中黒死牟さまのそばにいてもよろしいですか?』
「…いいだろう」
明日の約束をしてご満悦の黒死牟さまと別れ、数刻後、わたしはとあるお屋敷を訪ねていた。
「わぁ!甘い匂いがすると思ったらAだ。
久しぶりだね、今日もかわいいねA」
『童磨さま、久方ぶりでございます!』
現れたのは虹色の瞳をした上弦の鬼の童磨さま。
わたしの姿を見かけると彼は嬉しそうに走ってきて軽々と抱き上げられた。
「Aは下から見てもかわいいねぇ。いい子いい子」
童磨さまは抱き上げた腕を下ろすとわたしをすっぽりと懐に納めて頭を撫でた。
「でもなんで今来ちゃうのかな?
俺おなかいっぱいなんだよね、あと半刻早ければよかったのに」
『でも甘いものは別腹というでしょう?』
「君は魔性の女だねぇ。でも今夜は黒死牟殿にあげちゃったんでしょう?首元に歯型が残ってるよ。
だからまた今度にするね。
いくら伝説の稀血といえど、人間はすぐ死んじゃうんだから無理しちゃだめだよ」
『はぁい』
その後童磨さまの部屋へ案内された。
「それにしてもAは可哀想だよね、鬼になれないなんて」
部屋に入り定位置に座った童磨さまは眉を下げてそう言った。
そう、伝説の稀血は鬼になることができない。
血が濃すぎるからなのか、それとも伝説の稀血は鬼になれないようになっているのか仕組みは分からないけれど、わたしは無惨さまに血を頂戴しても鬼になれなかった。
「でも君は幸運だったね。
100年に一度の生まれると言われる高濃度の稀血は、だいたい“実が成る”前にそこらの雑魚鬼に喰われて死んでしまう。
13を過ぎて生きていたことは奇跡だよ」
『そうなのですか?』
「うん、君はきっと神様に選ばれた子なんだよ。
……あ、何か食べる?信者からおかきもらったよ。
あとこれは昨日もらった大福と、紅白饅頭もある。
全部お食べ」
『いただきます!!』
難しいことを考えることをやめ、お言葉に甘えて貢物をいただくことにした。
血を吸われてお腹が空いていたので、ペロリと全て食べ切ってしまった。
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ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時