其ノ拾参 鬼殺隊 ページ14
.
昼間、雨の中ひとりで茶屋で団子を食べていた時のことだ。
ひとりの侍が近づいてきた。
「……お前が伝説の稀血か」
『はい、なんのことでしょう?』
「鬼とともに討伐するようにと上からのお触れがあった。
体から甘い匂いがするのが特徴だと」
この男、鬼殺隊…!?
……しまった、姿を変えても匂いまでは隠しきれていなかった。
この男、雨の日なのにわたしの匂いが分かるなんて、きっと人より鼻が効くんだ。
顔色は変わらずともわたしは内心は焦っていた。
「ついてきてもらおう、ここで切り捨てる訳にはいかない」
骨が軋むほどの強い力で掴まれ茶屋を後にした。
殺されるかもしれないという恐怖より、もう無惨さまや上弦の鬼に会えないかもしれないという不安が頭をよぎる。
ところが街を離れ林の中に入ったその時だ。
「なっ……!!」
男が吃驚の声を上げ止まった。
うつむいていた顔を上げると、無惨さまが立っていた。
『無惨さま!!!』
「怖かっただろうA、すぐ助けてやる』
鬼殺隊の男は無惨さまを見ると、常人ではないということに気が付き刀を抜いた。
その手は無様に震えていた。
「私のAを連れ去るとは何事か」
「昼間なのに……!どうして!!」
「雨が降れば鬼とて昼間でも動けるのだ。愚か者が」
男は恐怖に顔が真っ青になり逃げようとした。
その直後、無惨さまの血鬼術によって身体はバラバラになってただに肉塊に変わった。
無惨さまはその赤い瞳でわたしを見つめると優しく抱きしめてくれた。
「痛めつけて殺したほうがよかったか?
それとも鬼にして殺さず永遠に痛めつけてやるという手もあったが」
『よかった。怖かったんです、殺されることより無惨さまに会えなくなることが。
ふふ、こんな考え、わたしらしくないですね……痛っ』
無惨さまがわたしの手を取ったと思うと、その手首が青黒く腫れていることに気がついた。
「……A、手首が折れてるな」
『すぐ治ります、そんなことよりお手を煩わせてしまってごめんなさい』
「お前のためなら手間とも思わない。
さあ帰ろう、私たちの住処へ」
『はい』
無惨さまは自分の羽織を私にかけ、雨の中を歩き出した。
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←其ノ拾弍 珠世
298人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時