其ノ壱 無惨さま ページ2
.
「A、起きろA」
『うぅ〜ん、よく寝た』
なんだか懐かしい夢を見ていた気がする。
目を開けると見慣れた無限城の中にいた。
『おはようございます無惨さま。今日はいい月夜ですね』
「ああ、そうだな。
ところで……何か夢を見ていたのか?」
『うふふふ、寝言を言ってましたか?』
笑いかけると無惨さまはうっすらと笑った。
その笑みは鬼と思えぬほど美しいものだった。
──こんな美しい人がわたしを救い出してくれたなんて。もはや神様だわ──
「A、また心の声が漏れ出ているぞ」
『あらら、聞こえちゃいました?』
無惨さまは満足気にわたしの頭を撫でる。
『無惨さまと出会った時の夢を見ていたんです。
わたしを地獄から救い出してくれたあの瞳、今思い出しても惚れ惚れします』
「お前ほど貴重な存在なら大切に扱うのは当たり前だ。
ぞんざいに扱っていた人間どもが悪いのだ」
『うふふ』
「何がおかしい?」
『人間のわたしでもあなたのお役に立てて嬉しいんです。
どうかわたしが死ぬまで大事にしてくださいね』
「無論そのつもりだ。Aを手放したりなどしない」
鬼から恐れ崇められる無惨さまがひとりの人間の小娘にこんなに優しくして接してくれるなんて。
わたしは毎日嬉しくて仕方なかった。
わたしは舞い上がりそうな心を抑えて立ち上がった。
「どこへ行く」
『こんな綺麗な月夜ですもの。
上弦の皆様へ挨拶に行ってまいります』
わたしは無限城を抜け、夜の闇に消えた。
299人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時