第三十一話（1） ページ1
「ふふふ〜ん♪」
上機嫌に鼻歌を歌いながら伊作は忍術学園の廊下を歩く。
向かう先は彼が委員長を務める保健委員会の拠点地、保健室である。
手には保健委員会の皆で食べようと土産に買ってきた団子の包み。
「しかし今日は運がよかったなぁ」
1人そんなことを呟いて伊作は歩みを進める。
その発言通り、今回の実習は不運な出来事に一つとして巻き込まれずに無事に終えることができた。
道中、偶然にしんべヱ、喜三太、なぜか顔色の悪い仙蔵と合流して忍術学園まで帰ってきたが、何故か仙蔵も始終機嫌がよかった。伊作が思うに彼も今回の実習が上手くいったのだろう。
「あれ？」
そんなことを思い返しながら保健室前に着くと、伊作は一つ小さく首を傾げる。
梅雨が明けたここ数日は一気に気温が上がり、蒸し暑い日が続いていた。今日だって例外ではない。
故に保健室の戸は病人でも中にいない限りは開け放しているのだが、今日は閉ざされている。
誰か病人でもいるのだろうか、と伊作は「失礼します」と小声で声をかけてそっと障子を開ける。
すると、むっとした熱気が保健室の中から伊作の顔面へと流れ出てきた。
「うわ、暑…」
思わず顔を顰めてから保健室の中を見回せば、保健室内は無人。病人どころか保健委員会の人間も鈴も新野もいない。
ただ、囲炉裏の火が小さくぱちりと燃えていて、それがこの熱気の原因となっていた。
「あれ？変だな」
鍋でもあれば薬か何かを作ろうとしたのだろうとも考えられるのだが、囲炉裏には鍋をくべているわけでもない。
不思議に思って保健室の中に入れば、囲炉裏の側に複数の小枝が散らばっていることに気が付いた。
屈んで小枝の一つを手に取る。
「これは…！」
まじまじと小枝を観察して伊作はあることに気が付くと、さっと小枝を搔き集め囲炉裏の側から離す。
今日はこの後職員会議が行われるはず。
慌てて保健室を飛び出し、職員長屋の方へと駆け出せば、炭を燃やし尽くした囲炉裏の火がぱちんと最後の小さな声を上げてゆっくりとその灯りを失っていった。
※
「残るは鈴さんだけか」
伝蔵の言葉に半助は頷く。
職員長屋の一室。
今から職員会議が行われる為、職員一同が集まっているのだが、鈴の姿だけがない。
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柴猫(プロフ) - 大変素敵な作品をありがとうございました！！！！ (1月20日 20時) (
レス) @page26 id: 8a81aaa43e (このIDを非表示/違反報告)
ししゃもん(プロフ) - うまのほねさん» 芥川龍之介も夏目漱石も好きな作家なので、そのように言って頂けて嬉しいです！長い長いお話でしたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました！ (2020年12月18日 16時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃもん(プロフ) - CHIHOさん» 皆余るほどのお褒めの言葉、ありがとうございます！CHIHOさんのコメントには何度励まして頂いたことか…！長いお話を最後までお付き合い頂いて嬉しいです！本当にありがとうございました！ (2020年12月18日 16時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃもん(プロフ) - はなさん» 朝から読んでくださりありがとうございます（笑）最後のシーンは中々上手く描写できず何度も書き直した所なので、そう言って頂けて嬉しいです！感想ありがとうございました！ (2020年12月18日 16時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
うまのほね(プロフ) - 完結おめでとうございます！コメントせず密かに応援していましたが、これは伝えるべきだ！と思い、コメントを残しています。芥川龍之介の様な、夏目漱石の様な、そういう印象を持ちました。(変な伝え方ですみません笑)素晴らしいお話をありがとうございました！ (2020年12月3日 1時) (レス) id: d5dfc639e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ししゃもん | 作成日時：2020年12月2日 0時
