たった少しの言葉が言えない【宮治】 (ページ4)

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○ ページ4

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「ねえ、別れよっか」

出来るだけ、顔には何も出さないようにして。

どうせ彼は今の私には興味ないのだろうと、そう銀色の髪の主を見上げると、それは見たことのない顔で、それこそ彼は｢無｣だった。

「なんで、そんなこと言うん……？」

辛うじて出たであろうその言葉は、私を縋りつかせるのには充分で、思わず手が伸びてしまう。

伸びた手は、いつかの彼の言った通り、しっかりと掴まれて、彼の元に埋まってしまった。

頭に浮かぶのは｢なんで｣の言葉ばかりで。

なんでこんな状態にあるのか。

なんで彼はあんな顔をしたのか。

なんで私はこんなことをしようと思ったのか。

途端にやってきた後悔に押し潰されそうになり、思わず後に回した手に力がこもる。

彼とは他人だから気持ちはなかなか伝わらないけど、行動から想像することは出来る。

「なんで、そんな悲しいこと言ったん。A、ほんとは別れたいわけやないやろ？」

「……すきだから。治が好きだから、最近治が遠くにいるみたいで、付き合い始めた頃とは違くなっちゃって、怖くて、」

彼は、私のことをよく考えてくれる人だった。

それは、今も変わっていないらしい。

「俺、ちょっと傲慢になってたかもしれん。Aが隣にいてくれることにありがたみを感じてなかった。……ごめんな」

ああ、なんて素敵な人だろう。

なんて馬鹿なことをしようとしたのだろう。

私は、この人を棄てられるはずなんかなくて、この人も棄てられる気なんてなくて、答えはひとつじゃないか。

「まだ、治を好きでいてもいい？」

「当たり前やろ。俺かてお前が好きやもん。」

後に回された手が暖かく、いつまでもこうしていれたらいいのになあ、なんて阿呆丸出しの願いをするのだった。

○Fin○