199# 努力の行方 ページ49
▼Suzuko
以前、凪沙さんとAさんと。誰推しか、なんて話をした。そのときAさんに好きな人を襲名したいか訊いたら、全然だと否定をされた。
彼女は襲名を目指しているから、わたしと似た考えを持っているわけではない。でも、それでいい。00には色んな子がいるのだから。それぞれが、それぞれの魅力を持つ。
みんなで襲名を抱える凪沙さんたち。いつかではなく今、彼方さんと一緒にいたくて幼くも星を出たソナティ。柔軟な思考を持ちつつも、芯はいつだってぶれないAさん。大好きな00に近づくためにオーディションを受けたわたし。
だから、
「真琴さんみたいな幼児体型も、00には必要なんです」
「……っ、幼児体型言うなあーーー！！」
胸が大きい方が好きな人ばかりじゃない。真琴さんが見栄を張ってまでそうしたいのなら、仕方がないけれど。
もし、わたしたちを応援してくれる方がいて。その人たちに嘘をつく。実際の真琴さんを見たら分かってしまうのに。
それでも自己肯定感の低い彼女は、体型のコンプレックスをどうにかしたいと強い思いを持っている。欠点じゃない。ぽっちゃりが好きな人も一定数いると思うけれど……。
わたしの、ストレートな物言いに。思わずガバりと立ち上がる真琴さん。その姿に、わたしは目を丸くする。彼女は気づいていないのか。「真琴さん、それ……！」と指差して教えてあげると……
▽
そろそろ私もお風呂から上がろうかな。そう思ったところで、日中にも聞いたような叫び声が聞こえた。これ、また真琴！
湯船に浸かっていたり、体を拭いていた面々は途端に駆け足になり、急いで宿の浴衣に着替えを始める。湯冷めも気にせずに走るとパタパタとスリッパの音が響いた。途中で先に上がった智恵理、そして凪沙と合流して全員で部屋へ向かう。
最初に着いたのは智恵理。出入口のレバーハンドルに手をかけてドアを開くと、ベッドの上には鈴子と真琴が。鈴子は背を向けて震える真琴の背中をさすっていた。
真「胸が、胸がぁぁぁ……！」
凪「真琴どうしたの！？」
楚「才ッパイ取れた！？」
真「うっ……うぅぅぅぅ……！！」
真琴はこちらを相変わらず見ない。胸が、と呻き声を上げるだけ。泣いているような鼻声ではなさそうだけど……。全員が周りに座り込んで、真琴を見ていた。
その彼女はいきなりくるりと振り向きながら「ドバーーン！！」とジャンプ。スプリングがぎしりと音を立てた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
