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その場で特別に喜びはしない。彼女はいつもの調子でツバサさんの言葉を聞いた。返事の後、彼女は一足先に着替えに向かおうとした別の集団から名前を呼ばれた。
「Aー、ウチらもう行くよー？」
「あ、はーい」
今回は撮影を終えたら熱海星に一泊する。Aはたかみなさんに呼ばれると、己のスーツケースを引いて襲名メンバーの列に行ってしまう。その背中にちょっと見慣れた自分がいた。
さっきまで隣にいたはず、けれど数秒後にはこんなに遠い。同じ場所にいたらそれがさらに色濃く感じてしまう。凪沙たちと前に進んでいることに不満は無いのに。嬉しいと感じているのに。Aは数段上にいる。そんな気がした。
それに、Aは自分の力でキララを輝かせることができる。私……今は負けてる。
凪沙だけじゃない。私は、あの子にも負けたくない。
▽
着痩せするタイプなんですね。姿勢もとても良いです。すぐ隣で着替えていたゆきりんさんは、ビキニに着替えた私を見てそう言った。
すると、背後にいた優子さんに目をつけられたようだ。頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見られる。反射的にフリーズしたら「うりゃっ！」と、両脇からいやらしく手が伸びてきた。……しっかり捕まえられてしまう。
「ほうほう、これは中々……。ゆきりんにはまだまだ及ばないけど良いもの持ってるね〜！ 今後の成長に期待」
「……ひぃ。発言がもうアウト…………あ、ちょ。んっ」
「はいはいそこまで」
スタッフさん待たせているんだから。遊ぶな。
そう言って助けてくれたのは才加さんだ。優子さんの魔の手(？)から解放された私は彼女の後ろに隠れた。
さすが9代目ゆうこ。オリジナルの大島優子は、楽屋で自らも上半身を露わにしてメンバーたちのバストチェックをして回っていたらしい※。こんなところも魂と共鳴しているのか。
「A、こっち側歩きなよ」
「……佐江さん。それに才加さんも。ありがとうございます」
体力担当の二重ガード。それを見て、優子さんは拗ねたように唇を尖らせた。彼女は「緊張をほぐしてあげようとしただけだって」と続ける。
でも半分は触りたいって、下心もありましたよね……？？ 常習犯のように俊敏で、躊躇がない。触り方がいやらしかった。
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※週刊実話WEB2021年10月7日号にて
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
