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息遣いが荒い。立ってるだけでやっと。私が手を離したら倒れそうなほど怪我が酷いんだ。……それに、たかみなさんの手。気の所為、じゃないよね？
私に続いて彼方さんとゆきりんさんも駆け寄ってきた。優子さんがその場で動かないからと、才加さんも様子を見に来てこちらを窺う。たかみなさんは衣装を着た彼方さんを見やる。そして私の支えを振り払って、一歩。
「脱いで！」
「えっ…」
「その衣装は私のだから、私がライブに出るから！！」
「……！」
開演間近の申し出。でも、みんな動けない。気軽に判断できない。ここにいる誰もが分かっていた。
沈黙に応えたのはツバサさんだった。
『たかみな！』
「やらせてください、絶対に無様な姿は魅せません！ 5代目高橋みなみとして……最高の00のステージを、この星のみんなに届けますから！！」
星、燃えるような火の玉。そして私の片翼。たかみなさんのアイドルオーラにキララが三体引き寄せられ、輝いた。
ステージを、たかみなの名を渡したくない。自分がステージに立ちたい。その強い想いがツバサさんに届いたのか。たかみなさんに「二分で準備して」と支配人は決断する。
想いが通じた。たかみなさんは目尻に涙を溜める。対してツバサさんに交渉しているときから、どんどん浮かない表情になっていった彼方さん。
ツバサさんの采配に文句は言わない、けど……。彼方さんが仕方なしに脱いだ衣装を、覚悟を決めた顔で秒で着替えたたかみなさん。その横顔を見たら、なんか。…………
「しょげている場合じゃないですよ、彼方さん」
「………でも」
「ステージが光なら、戦闘は影。私たちが色濃くなるほど凍原星の人たちに希望と愛を届けられる。行きましょう、最高のステージを作りに」
分かってる。今の彼方さんが、かけてほしい言葉がそれではないことくらい。しかし時間が無いことも事実だし、考える暇も与えない方がいい。
やれることをする。芸能禁止の星におけるライブが、これから始まるんだから。手を掴んで、私たちは裏方へ走り出した。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
