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オリジナルのno3b。彼女たちが歌ったハート型ウイルスは、2サビ後の間奏に台詞がある。当時担当していたのは小嶋陽菜さん。思わせぶりな
フライングゲットにもその音楽は流れる。研究生でマイク握ったのは智恵理か。彼女のことだ。きっとキラキラなアイドルスマイルをしたんだろう。ファンも増えちゃうよ。
メイン公演も、そろそろ始まる頃かな。ツバサさんからの次の通信が、私がLASに乗り込む合図でもある。……ギリギリ？ たしかにそうかもしれない。けれど、
少しでも長く襲名メンバーと彼方さんの近くにいたい。ライブに向かうという緊張や熱、空気を同じように感じていたいんだ。
『十分後に開演します！』
「……了解！ 一曲目はRIVER！」
「「「おっしゃー！」」」
たかみなさんのアンダーは彼方さん。とはいえ、代わりにリーダーをできる資質に足りうるのは、現襲名の中では優子さんだろうか。
彼女は気合注入するように中腰になり、両膝を同時に叩く。力強い声にメイクや衣装を整えていたメンバーもササッと手を早めて席をたち、ステージの方へ走り出す。
ゆきりんさんだけが違う方へ。まだカッターシャツの前さえも留めていない彼方さんに、たかみなさんのステージ衣装を持ってくる。きっと彼方さんは少し小さい、Sサイズ。
「あなたの衣装は、」
「えっ、はい………あっ！」
「たかみなの分までよろしくね」
彼方さん……まるで雨上がり、雲間から光が差し込むような笑み。彼女はたかみなさん用の衣装を数秒抱きしめると、それに丁寧に袖を通す。
彼女がキララに選ばれているとはいえ、ファンが望むたかみなと同じくらいの感動を届けられるかは分からない。でも、私は応援したい。彼方さんの実力は研究生みんなが知っている。私はいつも後ろで見てるから。
「彼方さんっ」
「A。あんたも早く行かないと……」
「頑張ってください。私も、ステージを守るために一生懸命戦いますから！」
「……そうだね。お互い頑張ろう！」
吹き抜けの上り階段から、優子さんの「行くよ！」と最後の声が。おっと、私も急がないと。それぞれの目的を果たしに走ろうとしたとき。
下への階段から「待って」と声が。その声……たかみなさんは、医務室で休んでいたはず。手すりに掴まりながら登ってくるも、体は震えていて。そんな彼女を捨て置くなんてできなくて、慌てて肩を貸した。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
