165# 完全芸能禁止の星 ページ15
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「わ〜いっ、雪だ雪だ雪だ〜！ へにゃっ」
「楚方？」
「ちょっと、大丈夫！？」
中々触れることのできない雪に興奮してるみたい。楚方はいきなり走り出したかと思うと足を引っ掛けて転んだ。それに凪沙と友歌が気遣いの声を上げる。
え、怪我してないよね？ 雪だるまの頭用の雪玉を転がす手を一旦止める。だが楚方はみんなの気持ちを他所に、起き上がると首をぶるぶると振って雪を払う。
あ、全然大丈夫そう。積もった雪にダイブしたことすら楽しんでるな、あれは。
雪だるま、雪うさぎ。使えそうな石や枝を見つけて顔も作る。秋葉星でも多分雪は降らない。00に入った以上、故郷にもいつ帰れるか分からないし……。今のうちに私も楽しんでおいた。
雪合戦はやめとこう。汗かいて体調崩したらライブに支障が出るかもしれないし。じゃあ他に何か遊びある？ …なんて話していて気づく。あれっ、智恵理どこ行った？
辺りを見回せばすぐに見つけた。高台になったところに立っている。……何見てるんだろう。楚方がいの一番に駆け寄り智恵理に訊く。彼女は見つめる先を指差した。その方角には……
「むっ？ 街だ……」
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一年に渡って冬空の星。寒いから人を見かけないのだと思っていた。
人里まで下りれば雪が降る以外のことも知れるかもしれない。そんな想いを抱いてここまで来たけれど……。路地裏には【NO IDOL!】と芸能を禁止するポスターが選挙期間のように至る所に掲示されている。
思わずそれに手を伸ばして……
「……Aさん？」
「んー……剥がそうと思ったんだけど、そんなことしたら『もしかしたら00がいるかも』ってDESに勘づかれるよね」
行き場を失った手を下ろす。
これは私の願望。もしこの星に芸能を待っていてくれる人がいたならば。もう一度雪まみれのポスターを見やる。ごめん、そう思った。
「なんだか、暗い街だね……」
「おじさんも元気な〜い」
「灰色の空のせいかしらぁ」
凪沙が静かにそう言うと、コートのポケットに手を突っ込んで俯いて歩く男性が一人。楚方の声は聞こえているはずなのにこちらを気にする素振りもない。
聞こえるのは雪を踏む音だけ。立ち止まるとシーンとしている。美森さんは天を見上げる。白い雪雲の間には黒い雲も見えた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
