ラピスラズリ②【0048】 (ページ39)

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▼瑠璃川燈

あの日、お姉ちゃんが朝食の時間になっても部屋から出てこなかった。お母さんがイライラしているから、しょうがないなと呼びに行った。

お姉ちゃんがしっかりしないとあたしが怒られるんだから。今更反抗するつもり？子どもじゃないんだから。そんなことを思いながら部屋のドアを開けた。しかしそこは既にもぬけの殻。窓が半分開けてあるだけで、姉の姿はなかった。

………

………………

『燈。この成績はなに？』

『あ、えっと…』

『ちゃんと勉強してる？ Aより自由な時間があったというのに何をしていたの』

お母さんは既にお姉ちゃんを見限っていたから、捜索願を出した翌日はケロッとしていた。おそらく見つかってもそうでなくても大して興味無いんだろう。

あたしにはいい迷惑だ。お姉ちゃんがいないせいで全部のしわ寄せが自分に来ていたから。今まで成績のことを悪く言われたりしなかった。友達と遊びに行くことを咎められたりしなかった。

許さない。お母さんがあたしのことに口出すようになったのはお姉ちゃんのせいだ。

『ねえ燈。この人って、行方不明のお姉さんじゃない？』

『え……』

母と姉への不満を溜めるのも日常になってきた頃、学校の友達に見せられたものに目を見張る。お姉ちゃんの顔がアイコンのSNSアカウント。

これで、お姉ちゃんが今いるのは秋葉星だと知った。そして投稿を更に見ていくと00の新しい研究生ということも載っていた。

なにそれ。あたしがこんなに苦しい思いをしてるのに、あんたがアイドルってキラキラした世界に？

最低だ。アイドルになるために実の妹をお母さんに差し出すなんて。ここまで人の気持ちが分からないなんて思わなかった｡

………

………………

まるでスポットライトみたいに、キララがお姉ちゃんを照らしている。目の前で起こっていることが信じられない。でも……あたしは何も言えなくて。

ただ見つめるしか出来ないでいたら、お姉ちゃんと楚方ちゃんが目を見開いた。

「「織音！」」

空からDESの機体が落ちてきて、次の瞬間には視界が土煙で覆われた。それでもキララの輝きは灯台のようにお姉ちゃんの位置を知らせてくれる。

こんなの、有り得ない……のに。どうして目頭が熱くなるの。

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