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立っていられないほどの強い衝撃に膝ががくんとなる。目の前のファンが尻もちを着いてしまったようだから、大丈夫ですか、と智恵理のようにテントを一旦出て手を貸す。
揺れが収まったら会場の照明が消えた。そして、けたたましくサイレンが響き渡る。ジリリリ、ファンファン。二種類の音が不安を煽っていた。
「まさか、あんたが！」
「違うよ！ ………っ、」
「絶対に許さんっすよ！」
「捕まえろー！」
「待って！」
「織音！？」
確かに彼は爆破予告をした。友歌は少年を疑いの目で見ている。しかし彼は否定をしつつ、背を向けて逃げ出す。真琴と楚方も警戒心むき出しで追いかけようとした。
だが、それを止めたのは最も嫌な思いをしたはずの織音。少年を睨む面々は反射的に足を止める。
「捕まえるとか、そういうのやめよう？」
「握手会がどうなってもいいの！？ ………それに織音は、あいつに酷い目にあってんだよ！」
「でも……！」
友歌が前半に言ったことも、今の状況なら一理ある。でも、それが今絶対に必要かな。彼が本当に爆発物を設置したかも分からないのに。
鳴り続けるサイレンで冷静な判断が難しくなっている。そう思ったら、また地響きが。私が不安になってはダメだ。ファンを避難させないと、やっと考えることができるようになったとき通信が入る。インカムのスイッチを入れた。
『来たわ、DESよ！』
「DES……！」
『上空に、DESの無人機数機と輸送機を確認。降下部隊の可能性が高いわ。襲名メンバーはファンの安全を確保、研究生は迎撃！ 思いっきりやりなさい！』
ツバサさんからの命令に「わたし達だけで敵と戦うの！？」と凪沙は驚きの声を上げる。聞いている間にも建物に与える衝撃などで頭上から土煙が降ってきていた。
怖さで動けない人もいる。ふと織音の目線の先には、最初に握手に来てくれた女の子がいた。母親にしがみついて泣き叫んでいる。
彼女がその方へ駆け寄ってしまったとき、彼方さんと美森さんが人数分のマイクサーベルを持ってここまで来てくれた。
「わたし達も行くよ！」
「「「はい！」」」
丁寧に手渡すほど悠長ではいられない。
山なりに投げられるそれをちゃんと受け取った。
「美森さん、この方をお願いします」
「分かりましたわ。さあ、こちらへどうぞ」
「さあみんな、ファンを護るよ！」
「「「了解！！」」」
降り立つDES兵に向かって、私たちは走り出した。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
