・ ページ46
V.S
そのままゆっくりと、麺を啜る。ちゅるちゅるとした音と、だんだん笑顔になっていくAの顔。
やっぱり好きなのよねぇと、どこかぼんやり頭の片隅で当たり前のことを思った。
『ヴィル、これすっごく美味しいよ!』
「そうね」
目をキラキラさせながらアタシを見上げるAが眩しくて、目を細める。
そんなアタシは気にせずに、再びAはラーメンを食べ始めた。
アタシは心の中で一つ、ため息を吐く。人生設計が少し狂わされた。
少し目線を動かして、店内を見る。煩いくらいのテレビの音と、麺を啜る音。厨房から聞こえる、ラーメンを作っている音。
理想とはかなりかけ離れているが、これはこれでアリかしらね。
「A」
『ふぁい?……もぐ、あ、美味し』
静かな声で呼びかけると、Aは目線だけ上に上げて返事をした。
そんなに美味しいのかしら。後で一口貰おうかしらね。
そんなことを考えて、アタシは小さく口を開いた。……柄にもなく緊張しているようで、机の下に置いた指が、少しだけ震える。
「……アンタ、アタシと結婚しなさい」
その言葉は、存外簡単に口から出た。
Aはその言葉を聞いた瞬間に勢いよく顔を上げる。黒く輝く双眸と、目があった。
次の瞬間には、ぼふんっと音がつきそうなほど首元まで真っ赤にさせる。その変わりようが面白くて、だけど笑うのも可哀想だと唇を噛んだ。
ぱくぱくと何かを言いかけた口が開いて、閉じて。数回それを繰り返し、やっとのことでAは言葉を発する。
『よろっ、喜ん……で?』
「……ふふっ、良かった。断られたらどうしようかと思ったじゃない」
ぱちぱちと目を瞬かせ、夢じゃないかと頰をつねるA。
それから夢じゃないと分かるや否や、大きな目を潤ませ始めた。綺麗な瞳に、ゆっくりと膜が張っていく。
その姿に愛おしさが込み上げてきて、アタシは黒く煌く髪を優しく撫でた。
その瞬間、咳を切ったように泣き出すA。少なからず不安は覚えていたようで、申し訳ないという感情が生まれた。
「ごめんなさい、A。不安にさせたわね」
『……これから、幸せにしてくれたら許してあげる』
頭を下げると、鼻を啜る音と共に少しふてぶてしい言葉。
アタシは笑いながら顔を上げて「当たり前じゃない」と溢した。
「この世の誰よりも幸せにしてあげるわよ。覚悟してなさい」
サプライズにも程があるーー完ーー。
3388人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さ - 夢主に恋愛感情持ってるやついるの草ァ…カリムはともかくレオナとか絶対分かっててあげてるだろ。 (2022年6月6日 23時) (レス) @page17 id: 745f3a4c41 (このIDを非表示/違反報告)
麗亜 - 犬って女の子も、good booyって言うらしいです。 (2022年1月10日 17時) (レス) @page18 id: 436e3086c5 (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - 誕生日会……最高すぎません?……素晴らしすぎて終始微笑んでるんですけど。ほかの作品も順に見てるんですが、主様。天才脳をお持ちでは無いですか?最高楽しい幸せ癒しです! (2020年11月28日 12時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)
零夜(プロフ) - 鬱アニメ、某魔法少女!?!?まどマギですか!?!?!(覚えてない) (2020年11月27日 0時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - チーズ鍋さん» ありがとうございます!! (2020年11月22日 23時) (レス) id: adf0bec428 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2020年10月23日 0時