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イルミside
「それ、持ってくれてありがとう」
背中に担いでいるのは先程の死体。棺桶の上に乗せただけだとあまりにも不安定で、終いにはズルズルと半端引きずるようだった。それに見兼ねて死体を持ってやることにして今に至る。
早くも死臭が漂い始めた屋敷を出て、月が照らす夜道を歩き続ける。
もうすぐで門をくぐる、という所で不意に彼女の足が止まった。
「そういえば名前、訊いてなかったね。私はA、A＝サフィール。貴方は？」
「イルミ＝ゾルディック。イルミでいい」
「私もAでいいよ」
簡単に自己紹介を済ますと、何かを思い出したようにAが走りだす。
「ごめん待たせちゃったね」
そう言って門を抜けAが駆け寄った先には、体長2mを有に越すであろう巨大な灰色の狼が寝そべっていた。
「この子はリュビ。大丈夫だよ、別に食べたりなんてしないから」
そう言いながらAが頭を撫でると、リュビと呼ばれたその狼が目を開き起き上がる。血潮の様に赤い瞳がゆっくりと近づいてきて、そのままスンスンと匂いを嗅がれた。
近くで見るとさらに大きい。Aの様な身長なら前足を振り上げただけで容易く体半分を引き裂けそうな程だった。
「死体そこに置いていいよ」
言われた通りに死体を地面に置くと、リュビが大きな口を開けてパクリと死体を咥え上げた。
食べるのか、と思いきや死体を咥えたまま踵を返し、奥へと伸びる小道を歩き始める。
「家、此処から歩いてすぐだから」
Aもリュビの後に続いて小道へと歩く。
相変わらずAが引きずる棺桶はゴロゴロと音を立てている。そんなこともお構い無しにAは楽しそうに木々の根を飛び超える様にして小道を進む。
その時、段差を乗り越えきれなかった棺桶の蓋が衝撃を受けて少し開いた。其処からはらりと中から何かが地面に落ちる。
何かと思って拾うとそれは薄桃色の小さな花びらで
はらはら、はらはら
Aが歩いた後に薄桃色の道が出来る。
暗い夜道の中、白の少女が棺桶から薄桃色の花びらを零しながら道を作る。
「着いたよ」
そんな景色に見とれていたのか、気がつくと目の前に現れた大きな屋敷。
「ようこそ“人形の舘”へ。なんて、人様からはそう呼ばれてるけど、なんてことないただの家よ」
お花のお茶、入れてあげるわ。そう笑い振り返るAの足元にも一つ、花びらが落ちた。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ずっと前から記憶に残る素敵な作品です……二周目読んで大号泣しながら携帯握りしめてました……。作者様ありがとうございます、この様な作品が再び読めて本当に嬉しいです。 (2020年3月20日 22時) (
レス) id: 059aca8b09 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 日本語も発想も舞台も物語も綺麗で美しくて、大好きな作品です。こんな素晴らしいお話を残してくださってありがとうございます。読むことができて幸せです。 (2020年1月26日 0時) (レス) id: 9668003c28 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 柴山犬さん» 此方こそ本当に有り難う御座いました！ (2019年4月29日 8時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - もうかなり前に完結した作品なのに、コメント本当にありがとうございます…！満月。碧蒼さんにうっとりしていただけて、私としても嬉しい限りです。また思い出したときにでも読んでやって下されば、本当に本当に幸いです…！ (2019年4月27日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 本当にもう...息が出来ないくらいに最高でした！うっとりしてしまいました... (2019年4月22日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2016年9月4日 23時
