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イルミside
「これ、貰っていってもいい？」
そう言って少女が二人の間に転がる死体をつま先で突付く。
「……別にいいんじゃない」
彼女が手に引いていたのは鎖の伸びるキャスター付きの棺桶だった。ゴロゴロと結構な音量なのに彼女が後ろにいた時も全く気が付かなかった。
なんでキャスター付きの棺桶なんか引きずってるんだ。と思ったけど、それを聞く前に彼女が先に口を開いた。
「この人、殺しのターゲットだったの？貴方暗殺者でしょう？」
「まあね」
何処か嬉しそうに死体の側にしゃがみこむと暫く死体を眺める。
「こんなに綺麗に人を殺せるんだね」
感心したように手や足を持ち上げたりして彼女は死体をしげしげと観察する。死体を触る少女の手首にうっすらとレースの様な模様が浮き出ている。ほんの少し青みを帯びたそれは、彼女の肌の白さをより一層引き立てていた。
不意に彼女が顔を上げて、
「ほんとに貰っていいの？」
と訊いてきた。
俺を見上げる彼女は身に纏うものの全てが白くても、瞳だけは夜空をそのまま切り取った様な深い青色だった。
「別に俺のとかじゃないし」
「そっか。じゃあ有りがたく貰っていくね」
よいしょ、と棺桶の上に死体を乗せるとそのままゴロゴロと棺桶ごとドアに向かって転がしてゆく。
「ねぇ」
咄嗟に口から出た俺の声は予想外に部屋に響いて、驚いた様に少女が振り返る。
「その中、何が入ってるの」
死体の乗ったキャスター付きの棺桶。質問の対象がそれだと理解した様で改まったようにそれを見やる。
すると少女は俺に向き直すと、小首を傾げて
笑った。
「貴方が暗殺を生業とする様に、私はこれを人に売っているの。本当に必要とする人に、世界にたった一つのオーダーメイドをね」
棺桶に繋がった鎖を軽く持ち上げると、なおも俺に笑いかける。
「気になるなら一緒に来る？お茶くらいは出せるわ」
気がつけば殆ど無意識に頷いていて。彼女の後を追うように部屋を出る。
その日は、月が眩しい夜だった。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ずっと前から記憶に残る素敵な作品です……二周目読んで大号泣しながら携帯握りしめてました……。作者様ありがとうございます、この様な作品が再び読めて本当に嬉しいです。 (2020年3月20日 22時) (
レス) id: 059aca8b09 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 日本語も発想も舞台も物語も綺麗で美しくて、大好きな作品です。こんな素晴らしいお話を残してくださってありがとうございます。読むことができて幸せです。 (2020年1月26日 0時) (レス) id: 9668003c28 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 柴山犬さん» 此方こそ本当に有り難う御座いました！ (2019年4月29日 8時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - もうかなり前に完結した作品なのに、コメント本当にありがとうございます…！満月。碧蒼さんにうっとりしていただけて、私としても嬉しい限りです。また思い出したときにでも読んでやって下されば、本当に本当に幸いです…！ (2019年4月27日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 本当にもう...息が出来ないくらいに最高でした！うっとりしてしまいました... (2019年4月22日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2016年9月4日 23時
