元カノは無能じゃない。 ページ13
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中原が風呂を出ると吃驚して髪を拭く手が止まった。
「な、なんだコレ…」
割れた硝子瓶の破片は何処にもなく、電子レンジは綺麗に拭かれて卵の残骸もない、葡萄酒が零れて作った酒の水溜まりもない。
二人が酒を飲む前の中原家に戻っていた。
「おお、中原。アンタ、シャワー長いね。少し掃除したから!我、天才なり!」
Aは中原が前にサイズを間違えて買った洋服を着て朝飯を作っている。
因みにAはこの服を借りパクしていく心算であるし、この服は中原のタンスやクロゼットを荒らして獲得した戦利品である。
「お前…、嫁に欲しい」
中原は涙が出てきた。
こんな糞みたいなアマでも家庭的なのか、と。
泣けてくる。
「御免よ、中原。我が結婚する人はもう決まってるのさ!」
「な、誰だ!?」
決して好きだから焦ってるワケではない、ただ仲がいいから知りたいだけだ、と中原は平常心を保つ。
「それはな…」
ゴクリ、と中原は息を呑む。
「それは〜…」
「それは?」
「あ〜…」
「あ〜?」
キョドるA。迫る中原。
「あ〜、ア〜メリカで逢った黒い服着てて髪がモジャモジャしてて長くて、背の高い男性だよ!」
即興で適当な容姿を云うA。
勿論、そんな輩知りもしない。
「ふぅん、そうか」
それに塩対応な中原、別に好きだから落ち込んでるワケじゃない、との事。
それから二人は他愛のない謎過ぎる話をし朝飯を食べた。
この不穏な空気に耐えられないワケでない、断じて。
「水原、これから如何する心算だ?」
中原は自宅の鍵を閉めながら、隣に立つAに訊く。
「だいじょーぶ!宛は五万とあるのだ!」
ふははは、ありがとなぁ!中原ぁ!、と叫びながら何処かへ走っていくA。
その後ろ姿を見ながら中原は何も云わなかった。
___アンタが羊の王だった奴か!辛そうだな!よし、酒飲もう!
___中原、お前、すんげぇえ良い奴だな!詐欺に騙されそうな感じがする!
___我、何故か太宰と付き合う事になった!それでも、君と我は友達だぞ!
中原は昔の事を思い出す。
独りの中原に熱心に寄り添ってくれたのはA。
強い力しか持ってなかった中原の隣にいたのはA。
これは再開して恋が芽生えたとかじゃない、断じて。
友達以上恋人未満って奴だ。
中原はマフィア本部を目指した。
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ちくわ - 好きすぎます (2月20日 3時) (レス) @page37 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
米粉めこ - 最高です!面白すぎて腹筋こわれましたwww (12月10日 18時) (レス) @page36 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
ああ - こういうお話好きです!続き待ってます!!! (2022年9月18日 16時) (レス) id: f16cf667ce (このIDを非表示/違反報告)
遠藤氏(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» 自分も笑ってこようって思いまして、入社試験の回を読もうと思ったらどれが入社試験の回なのかわからず、どうしてこんなサブタイにしたのか後悔してますwww (2022年7月30日 18時) (レス) id: d7905a84e3 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - 超笑ったwwwww途中呼吸できなくなったわwwwww(入社試験のやつで) (2022年7月30日 17時) (レス) @page35 id: 50d700a5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年5月13日 20時