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エレベーターって独特の雰囲気がありますよね。何か、ひょんなことから別の所に繋がってしまうんじゃないか、とかそんな事を連想させます。
エレベーターにまつわる怖い話もいろいろあって、やっぱり逃げ場のない狭い空間ですから、何かと一緒になってしまう話が多いようですね。うちにもエレベーターがあるのですが、そういうった話を読んだあとは乗れなくて階段をつかいます。

前置きはこのぐらいにして……。
さて、この話も、エレベーターにまつわる怖い話として差し支えないでしょう。
どうぞ、お楽しみください。
とにかく、気分が悪かった。
旅先だからってたくさん酒を飲んで、気持ち悪くなってホテルに帰ってきたのだ。
来たエレベーターが上りか下りかもわからないまま慌てて乗り込み、部屋のある階のボタンを連打。今にも吐きそうだ。

ゆっくりと、エレベーターが下って行くのがわかる。目的の階はここよりも上なのに。
――しまった。間違えたか。
きっと程なくして、地下の駐車場に着くんだろう。立ち止まったせいか吐き気はやや治って、冷静に考えられるようになった。
まあ、最悪駐車場の何もないところに吐いてしまって、誰か呼ぼう。恥ずかしいが仕方ないのだ。

程なくして、はなかなか訪れない。
これも酔いの影響なのか?普段あまり酒を飲まない彼にはわからなかった。
ふと、上の階数表示に目をやると、なんだか違和感があった。少し考えたら、すぐわかることだった。

階数が表示されていないのだ。

これはどうもおかしいぞ。
やっと、そう思い始めた。酔っていようがいまいが、エレベーターで階数が表されていないのは、おかしいに決まっている。
じゃあ一体ここはどこなんだろう。一瞬そんなことも考えたが、いや、と、思い直した。
これは故障だ。そうに決まってる。
これはホテルの1階にあったエレベーターで、下に降りたのに地下についていないということは、もちろん途中で止まっているということだ。
きっと程なくして、係の人から連絡が来るんだろう。そこで、故障の原因(電気系統の故障、機械トラブルなどなど…)も知らされる。無事出られたら、詫びの品でも貰えるんだろう。

だが、その程なくして、もなかなか訪れない。腕時計を見ると、時刻はもう1時を回っていた。さすがに、苛立ちが募る。全く人1人立ち往生させておいて、連絡もよこさないなんて。
出たら文句言ってやろう。
30分ほどして、さすがに眠たくなって来た。外とは対照的に、ホテルやエレベーターの中は丁度いい温度に保たれている。それに、エレベーターは結構狭い。だから、明るくても次第に彼は船をこぐようになって、いつしか完全に眠りに落ちた。

時刻は午前3時。
ゆっくりと目を覚まし、彼は困惑した。
おれは確か、観光に来て、ホテルのベッドで寝たのではなかったか。
でもよくよく考えて見ると、それは一昨日の記憶だった。
そうだ、昨日はエレベーターの中で寝たんだった。起きてもまだエレベーターにいるということは、修理の人はまだ来ないんだな。いくらなんでも遅すぎやしないか。

そこでやや酔いの覚めた彼は、恐ろしいことに気がついてしまった。
このエレベーター、まだ降りているのだ。昨日は酩酊感や苛立ちで気づいていなかったのだろう。
でも、そんなことはありえない!
昨日の夜から下り続けているとしたら、もうずっと、地下の何十キロも深いところにいるはずなのだから。

彼が何を考えて、何をしようとも、エレベーター特有のあの感覚は、ずっと下り続けていることを示していた。
ずっと、ずっと……。

それは、言い表しようのない恐怖だった。
先ほどまで安心して眠りさえした場所は、やはり『どこでもない』場所だったのだ。一寸先は闇なのだ。
もしかしたら、今にも扉が開いて恐ろしい場所に繋がるのかもしれない。
もしかしたら、今にも耐え難い拷問が始まるのかもしれないし、おれは恐ろしいものを無理に見せられるのかもしれない。
今まで読んだ怖い話が頭をよぎる。
そんなことを考えているうち、誰かが言っていた何かを思い出した。

「何かがいるかもしれない、いないかもしれない。そんな状況に、人は一番恐ろしいものを作り出す。例えばベッドの下に潜む殺人鬼、例えば細く開いた扉からこちらを見つめる何か……タンスの隙間、扉の向こう側、影の中、それこそがホラーなんだ。そこに恐ろしい何かがいることでも、驚かせることでもない」

思い出した言葉は、この状況にぴったりだった。

いや、まだ何かが起こったわけじゃない。ならきっと、戻るための手段があるはずだ。
とりあえず、映画やドラマでよく見る、上部から出るという方法を試そうと思い立った。幸いにも、天井は高くない。
何度かジャンプしてみて(エレベーターが止まらないよう慎重に)、蓋になっている部分をずらすことが出来た。
ここからが問題で、上に上がることはとても難しかった。なにせ足場となるものがないのだ。
それでも、何度も試してみて外側のパイプのようなところに手を引っ掛け、ぶら下がることが出来た。あとは壁に足をついて体を持ち上げ、よいしょと上に這い上がることができた。
一時間がかりの重労働である。
だが、外は思ったよりも暗く、エレベーターの構造を知らないおれにとっては危険なものだった。
なので一旦降りて、持ち物を確認することにした。

・時計
愛用のCASIOの時計。たぶん、普通に動いている。

・スマートフォン
圏外。充電は残り13%から減らない。その点を除けば普通に機能する。

・メモ帳、ペン2本
メモ帳も、ペンもおかしいところは見当たらない。どちらも使ったら減った。

・スニッカーズ(プレーン)2本(元3本)
おいしい。特に変なところはない。

・飴0個(元1個)
ソーダ味の、砂糖の塊がついてゴツゴツしてる飴。おいしかった。

・飲みかけの天然水1本
あれだけ時間が経ったのに、喉は乾かない。
いざという時のためにとっておく。

・財布
中には万札2枚、千円札1枚と小銭で370円。
クレジットカード、銀行のカード、ファストフード店、喫茶店、理容室のスタンプカード、本屋のポイントカード。
それから運転免許証と合鍵がある。
財布から金を出しても増えない。残念だ。

・鍵たち
家の鍵、車のキー、ホテルのカードキー。
残念ながら、役に立ちそうにない。

・本1冊
普段から、ちょっとした待ち時間のために本を用意する。暇つぶしにはなるだろう。

・ハンカチ、ティッシュ
どちらも気に入ってるもの。多少安心できる。

持ち物はこれだけだった。
そして、気がついた。

喉が乾かないのだ。それだけではない。空腹も、尿意もない。こんなに長い間ここにいるのだから、腹の虫の1つや2つ、鳴いてもいい頃だろうに。
気にしないことにして、また出口を探り始めた。

そろそろ1日が経つ。
エレベーターはまだ降り続けていて、今のところ脱出の試みは全て無駄だった。
明日になれば、何かが変わるだろうか。
そう祈りながら、眠りについた。

2日目の朝だ。
士気を高めるために少し体操をして、今日こそはエレベーターの上部をいじってみることにした。

昨日と同じように、上部に這い上がる。
今回はスマホをポケットに入れてあるので、あかりに困ることはなかった。
早速あたりを照らしてみると、(実物のシャフトを見たことがないのでわからないが)普通のエレベーターシャフトに見える。
ただ、普通のエレベーターより体感的には遅いように感じた。
だからと言って、どうこうできるわけでもなかったが。特に制御する機械もないようだし。
そこで、ふと閃くものがあった。
エレベーターを吊り下げている、ロープが目に入ったのだ。それを登っていけば、いつかは帰れるかもしれない……。
だがその閃きは、すぐに却下された。そもそもそんな体力は、彼に残されていないのだった。
おれは一般人なんだぞ。彼はそう自分に言い聞かせた。スパイでも、FBIでも、ヒーローでもないんだ。その日は1日、剥がせそうなところ剥がし、外せそうなところは外す作業に費やした。

3日が経った。
エレベーターはまだ降り続けている。
彼はまだ諦めていなかった。
だが、止める手段も、降りる手段も見つからない。

もう1週間になる。
エレベーターは降り続けいる。

1ヶ月、1年……。
エレベーターは下り続ける。ずっと、ずっと……。

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ロイヤルストリート(プロフ) - 松野 彩松さん» ご想像にお任せします (2017年9月3日 15時) (レス) id: 2a96eef140 (このIDを非表示/違反報告)
松野 彩松 - むっちゃくちゃ降りるやんか……。いつまで、続くん?(´・-・`;) (2017年9月3日 14時) (レス) id: 2512cd9f0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ロイヤルストリート | 作成日時:2017年8月25日 11時

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