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神なんて信じていないし、信じれば救われるなんてあり得ない。

世の中そんな甘くないんだって、何となく知っている。



けど。



「おや、こんにちは。今日も来てくれたのですね」

「……はい、神父様の説教が聴きたくて」


――あなたの深く優しい声が、聴きたいから。


「あと、旧約聖書のここのところが良く分からなくて……」

「分かりました。ミサが終わりましたら、お教えしましょう」


――あなたと、長く会話したいから。



私は今日も、ホワイトローズが咲き誇る、丘に建てられた教会を訪れる。

煩悩とは正にこのこと。


存在するはずの無い神よ、
嘘という大罪を罰すことの出来ぬ名ばかりの神よ、赦し給え。
日曜日のお昼。

平日の学校から解放され、まだ遊べる時間だと
足掻く者が外で羽を伸ばしている時間。

わたしは、習慣と化したミサへと来ていた。

前から3列目、右列の長椅子の通路側の席。
そこがわたしの特等席だ。

たまに外から聞こえてくる子供たちの笑い声、鳥の囀り。
少し開いた窓から吹き込むそよ風。

薔薇をモチーフにしたステンドグラスから、通路まで、あたたかな陽射しが降り注ぐ。
膝に置いた聖書に目を落としていると、視界の端に見えた。

そして。

自然に愛されているこの教会の中に響く、歌声のような声。
耳を傾けながら陶然としていた。

ああ、なんて幸せなんだろう。


「―――…。…、……」


(……、ん?)

流れるようだった説教が、ふと途切れた。
……どうしたのだろう?


不思議に思って顔を上げる、と。


「何故この教会に咲く花がホワイトローズなのか、考えた事はありますか?」


ほんとうに綺麗で、まるで宝石みたいで。
何もかもを見透かしているような、あの、不思議な瞳が、少し恥ずかしくて、好きだったのに。


ばちり。


目が合った。

チリ、と項がざわついた。

思わず見つめ合ったまま固まってしまう。


――なにか、違う。


第6感は告げる、とでも言うのだろうか。

穏やかな目線にいつもころりとやられてしまうが、今日ばかりは違った。


目の奥にあるなにかが。

こわい。


彼が瞬きをすると、金縛りが解けた。

「……あっ、すみません。……何でしたっけ……?」

ぱっと目を逸らし、内心焦りながらもなんとか取り繕う。
暴れだした心を落ち着かせるように、ざわついた項をなだめるように、首をかく。



――気のせいじゃない。何時もと、なにか違う。



じっとりと、嫌な汗をかいた。



毎週行われるミサのはずなのに、

いつもいる顔見知りの信仰深い方々は誰も来なかった。

(彼と2人きりだ。)


居心地のよかった教会内の温度が、急激に下がっていく。

舞い上がっていた心も、冷えていった。


沈黙に耐え切れず

ちら、と伺ってみると。


『貴女はちゃんと、聞いていたはずですよ』


視線がかち合う。


耐え切れずに再びぱっと視線を落とした。

聖書の字が頭に入ってこない。


“魔に魅入られる”

そんなフレーズがよぎった。


――思い出せ。


「……えっと…、確か、…白薔薇は『清らかでけがれない愛』を意味するもの、です。だから」


だから、教会を彩るにふさわしいのです。

いつかの、彼との会話。今日みたいな、ミサの日だった。


「…『だから、教会を彩るにはふさわしいのです』。そう教えましたね。聖母マリアを称える花だと。

花言葉ではありますが『恋の吐息』とも呼ばれています。

……ですが、聖書に書いてありましたか?」


「白薔薇が、『清らかでけがれのない愛』を意味すると、本当に書いてありましたか」


相手の話すタイミングに合わせ、途切れたその瞬間に話を促すよう優しく相槌を打ち。
時には、やんわりと間違いを否定してくれる、巧みな話術。

そう、どれも、話を終えてから繋げるように返事をしてくれた。
なのに。

少女が頭の中で用意した『もちろんだ』という言葉。
それを口にしようとしたが、神父は遮るように続けた。

少女はその勢いに気圧されてしまう。

――どもりつつもなんとか言葉にしていく。


「…も、ちろんです。分からないところを聞いている時、神父様に教わって……、っ!」

少女は唐突に思い出した。

確かに、聖書について理解を深めようとしている時教わった。
神父の口頭で。

目を真っ直ぐ見て、しっかりと教えてくれるものだから。
わたしもその瞳を見返したんだ。

聖書から、目を離して。



驚愕の事実。

目を見開くわたしが、細められた彼の瞳に切り取られた。

溢れだした思考が、震えとなって体を支配する。
その様子に神父はゆっくりと口元に微笑を浮かべた。



じゃあ。


このひとが教えてくれたことは間違っていたの?


うそ、だったの?



「いいえ、意味自体は合っています。示す花が違う。
『白薔薇』ではなく、正しくは『白百合」です。」


先ほどから、心の声が聞こえているかのような返答なのに。
耳はしっかり神父の声を拾っているのに。


頭は、思考は停止したままだ。

聖書から、目が離せない。
いや、顔が上げられない。

――彼の異変を、本能で、肌で感じて。



「もっと、良い花があるでしょう?」



 ギィ……カツン。


 台上を移動し、その近くの床に足をおろした。



「教会を彩るにふさわしい花が」



 コツン。


 回り込んで、通路中央へ。



「貴女に教えましたね」



 カツン。


 そして、いつの間にか。



耳は、完全に音を覚えていて。
神父さまの磨き上げられた靴が、視界に入った。



 からだが、うごかない。

 うごかせない。



着擦れの音が間近くで聞こえた。



「それは、『キリストの血の跡に咲いた花である』と」


――良い子ですから、言えますね…?



耳元で、甘く、優しく、囁かれる。
ばくばくと心臓が暴れまわる。

シャン、と彼の胸元にあるロザリオが、揺れた音。

真っ白になりかかっている頭をなんとか稼働させ、答えを、声を、絞り出す。



「…あ、赤い、薔薇……」



クシャッ、と耐え切れなかった聖書が悲鳴を上げた。



「そうです。良く出来ました」



ふわり、と微笑んだ気配がする。
穏やかな雰囲気を感じる。
なのに、なぜだろう。


まだ、まだ。


顔が上げられない。
震えが止まらない。

その距離に、彼の醸し出す何かに。

全てにがたがたと全身を緊張させていると。


空気が揺らいだ。


すっと身を引いたようだ。

その途端、はぁっ、と肺が必死に酸素を求めた。
息がいつの間にか止まっていたらしい。

「信じれば救われる、だなんて調子が良すぎると思いませんでしたか」

声に誘われて視線をあげれば、教会のシンボルともいえる、

イエス様の架かっている十字架を彼は見上げていた。


「この白薔薇は、数百年に一度赤く染まるのですよ」
「そう、あなたのような愛しい人のおかげで、ね」

「あなたの思惑には気付いていました。ええ、最初から」

「神を信じ力に縋る事しかしない人間は、とても滑稽で愉快だ」
「神父をしていると、学ぶ事が多くて飽きません。ははは」

「私が神を信じているとでも?」

「貴女に偽りを教え、教会の周りに白薔薇を植えて。“信仰深い”などと?」
「神父だから何だと言うのです。神を信じたことはありませんよ。一度たりとも、ね」

「ですが、そうですね」

「貴女のおかげで、私も“信仰深い神父”になれるのですよ」

「マリアも、イエスも、きっとお喜びになる」
「神の下僕が増えたと」

「嗚呼、私のマリア」
「貴女を、愛していますよ」

少女の大きな瞳から、涙がこぼれた。赤い、赤い、懺悔のような涙が。
伝わった雫は、純白の薔薇にぽたりと落ちる。

すると、薔薇は瞬く間に深紅に染まった。
その花に、神父は愛おしげに口づけを落とす。

「どうして、そんなことが言えるの…」
「あなたが愛しているのは、“呪い(まじない)”まがいの、まがい物よ…」
「孤独に酔いしれ、己の愚行に陶酔する哀れな自分よ!」



―――沈黙。



「一時の”愛し合う”幸せを与えた。それで満足できたでしょう」



「そんなことは聞いていない…し、」


「興味も無い」



「さあ、祈りの時間ですよ」



少女の意識は激痛に引き裂かれ、暗転した。



「更なる祈りの為に、お力の向上のために」
「無垢な少女の御身を捧げましょう」


ぐったりと、真白な床に横たわる少女の体。
閉じられた目尻から、口元から、胸元から――体中から。

紅い血が、床を染め上げるように流れ出している。


「嗚呼、生贄の穢れを、我が愚行を、

大いなる愛の神よ、主よ、赦し給え」




「しんぷさまー!こんにちは!」
「ええ、今日は」
「あ、赤いばらが咲いてる!いつもは白いのに」
「はい。数年に一度咲く珍しい赤い薔薇の開花を見られて、君は運が良いのですね」
「わあ…きれい…」
「私が丹精込めて捧げましたからね。一弁一弁が貴重且つ愛おしい。美しい血の色でしょう」
「? うん、きれいだね!ほしいなあ、ちょーだい」
「…良いですよ、一輪手折りましょう。どうぞ」
「わあうれしい!大切に飾るね!」
「ありがとうございます。…その薔薇に、心を奪われないよう気を付けてくださいね」
「?」
「薔薇に魅入られた者は、薔薇に食いつくされる。そういうことです」


シャラン。
血のこびりついたロザリオを握りしめた。


口元に妖艶な笑みを浮かべて、一輪の薔薇を握りしめる少女を見下ろす。

「貴女が次のマリアにならぬよう、祈っていますよ」



少女の手からは、棘に傷つけられて一筋の血が流れていた。

まるで、涙のように。




「主よ、赦し給え」




ロザリオに口づければ、真新しい血の味がした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カトリック聖人伝によると「聖母マリアの清らかでけがれない愛を白ユリにたとえ、マリア・マグダレナの痛悔した血の涙で前非を洗い流した愛は真紅のバラにたとえられる」


(yahoo知恵袋より抜粋 URLhttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1316543623:)

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作者名:NEO | 作成日時:2016年7月14日 8時

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