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一年生の頃、ほかの先生の授業が嫌いだからと学校に行かなくてごめんなさい。
あなたは何も思っていなかったと思いますが。
二年生の頃、あなたの授業とあなたが好きすぎて要らぬ質問ばかりしてごめんなさい。
あなたは僕の事を煩わしく感じていたと思いますが。
三年生も終わるこの頃、あなたの事を待ち続けていてごめんなさい。
あなたにとって、僕の事なんて特に記憶に残らないただの一生徒であるだけでしょうが。
一年生の頃、ほかの先生の授業が嫌いだからと学校に行かなくてごめんなさい。あなたは何も思っていなかったと思いますが。
二年生の頃、あなたの授業とあなたが好きすぎて要らぬ質問ばかりしてごめんなさい。
あなたは僕の事を煩わしく感じていたと思いますが。
三年生も終わるこの頃、あなたの事を待ち続けていてごめんなさい。
あなたにとって、僕の事なんて特に記憶に残らないただの一生徒であるだけでしょうが。
これは、ファンレターです。決して、天地がひっくり返ろうともラブレターだなんて、言いません。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
僕があなたの事を認識した時、あなたはスーツを着ていました。細身の身体をそれで包み、僕たち生徒に対しても丁寧語で話すあなたを見て、僕の“教師”という概念が再構築されたのを覚えています。
昔は僕も教師になることを夢見ていたこともありました。しかし、思春期に差し掛かるにつれて勉強から逃げ出すようになりました。ごめんなさい、話が逸れました。この話は深堀しないでください。
そう、教師になるのが夢だったんです。小学生の時、ストレスで学校に行けなくなったことがあります、小学校一年生の時の話です。だけど、二年生になった時に出会った先生がとても優しくて、僕もこんな人になりたいな、と思うようになりました。たったそれだけの理由です。それだけの、小指の詰めのような小さな小さなきっかけが、あなたのお陰で両手いっぱいくらいの大きさになりました。
あなたの事を知ったのは、入試の日でした。やけに背の高い教師がいて、その先生が受験生達に「スマホを持っていたら預かります」と言いながらこちらにも歩いてきた。そんな事を、今も覚えています。多分きっと、あれはあなたでした。
無事に高校受験が終わり、あなたと出会ったこの学校での生活が始まりました。あなたは僕の所属するコースの特別科目の教科担任でした。最初の頃はあなたの存在はどうでもよかった。僕にとって“学校”というものは、面白くないものだったからです。とはいえ、堕落していた自分が折角合格できた訳です。一学期、二学期はちゃんと皆勤でした。しかし、二学期から生徒会に所属したころです。生徒会の担当教員は、現代社会の教科担任でした。その人が、僕は本当に嫌いでした。話も聞いているようで空返事。こちらが疑問を投げても何も答えてくれない。そんな彼奴が、大嫌いです。今も。三学期に入って、彼奴の顔も見たくなくて学校を休むことが増えました。彼奴の授業は木曜日の一時間目。あなたの授業は木曜日の五、六時間目。遅刻してでも行けばよかったものを、遅刻した時
の指導が嫌というだけで、毎週木曜日は家で過ごしていました。今では、凄く後悔しています。
三学期の終わりに近づいてきたとき、僕はあなたの授業の単位が危ういという話を聞きました。その話を聞いた時、まさかそんな事があるとは思いませんでした。後日、先生の計算ミスで既に落単しており、欠課補充なるものを受けなければならないという事が判明しました。この時の感情としては、「まぁなんとかなるでしょ」というようなものでした。
二か月ほど経った辺りで、僕のような落単している奴らが集められ、説明会がありました。
僕ら、落単組と成績不振組では集合時間などが違い、来てくださる先生方もまた違う一年生の僕らの教科担任として来てくれたあなたは、周りの先生方が学年の先生である中、一人だけ三年生を主に担当していました。同級生が「誰だあの先生」って言っていたのを覚えています。
その説明会の一週間ほど前、新型ウイルスによる臨時休校が発表されました。僕は、今まで楽しくなかったはずの学校に死ぬほど行きたくなりました。なぜなら、ふと学校生活を思い返したときにあなたの事を思い出したからです。それに至った経緯ですが、クラスメイトの女の子たちが推しの先生を作って沸いていたから、です。ね、僕って単純でしょ。もともと、学校そのものは好きだったんです。単なる中二病で、自ら学校から逃げていた。それだけだった。だから、イチオシの先生をあなたにして、あなたに声を掛けて、あなたに好かれようとすることで、僕は学校に行く意味を見つけたんです。
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僕があなたの事を認識した時、あなたはスーツを着ていました。細身の身体をそれで包み、僕たち生徒に対しても丁寧語で話すあなたを見て、僕の“教師”という概念が再構築されたのを覚えています。
昔は僕も教師になることを夢見ていたこともありました。しかし、思春期に差し掛かるにつれて勉強から逃げ出すようになりました。ごめんなさい、話が逸れました。この話は深堀しないでください。
そう、教師になるのが夢だったんです。小学生の時、ストレスで学校に行けなくなったことがあります、小学校一年生の時の話です。だけど、二年生になった時に出会った先生がとても優しくて、僕もこんな人になりたいな、と思うようになりました。たったそれだけの理由です。それだけの、小指の詰めのような小さな小さなきっかけが、あなたのお陰で両手いっぱいくらいの大きさになりました。
あなたの事を知ったのは、入試の日でした。やけに背の高い教師がいて、その先生が受験生達に「スマホを持っていたら預かります」と言いながらこちらにも歩いてきた。そんな事を、今も覚えています。多分きっと、あれはあなたでした。
無事に高校受験が終わり、あなたと出会ったこの学校での生活が始まりました。あなたは僕の所属するコースの特別科目の教科担任でした。最初の頃はあなたの存在はどうでもよかった。僕にとって“学校”というものは、面白くないものだったからです。とはいえ、堕落していた自分が折角合格できた訳です。一学期、二学期はちゃんと皆勤でした。しかし、二学期から生徒会に所属したころです。生徒会の担当教員は、現代社会の教科担任でした。その人が、僕は本当に嫌いでした。話も聞いているようで空返事。こちらが疑問を投げても何も答えてくれない。そんな彼奴が、大嫌いです。今も。三学期に入って、彼奴の顔も見たくなくて学校を休むことが増えました。彼奴の授業は木曜日の一時間目。あなたの授業は木曜日の五、六時間目。遅刻してでも行けばよかったものを、遅刻した時
の指導が嫌というだけで、毎週木曜日は家で過ごしていました。今では、凄く後悔しています。
三学期の終わりに近づいてきたとき、僕はあなたの授業の単位が危ういという話を聞きました。その話を聞いた時、まさかそんな事があるとは思いませんでした。後日、先生の計算ミスで既に落単しており、欠課補充なるものを受けなければならないという事が判明しました。この時の感情としては、「まぁなんとかなるでしょ」というようなものでした。
二か月ほど経った辺りで、僕のような落単している奴らが集められ、説明会がありました。
僕ら、落単組と成績不振組では集合時間などが違い、来てくださる先生方もまた違う一年生の僕らの教科担任として来てくれたあなたは、周りの先生方が学年の先生である中、一人だけ三年生を主に担当していました。同級生が「誰だあの先生」って言っていたのを覚えています。
その説明会の一週間ほど前、新型ウイルスによる臨時休校が発表されました。僕は、今まで楽しくなかったはずの学校に死ぬほど行きたくなりました。なぜなら、ふと学校生活を思い返したときにあなたの事を思い出したからです。それに至った経緯ですが、クラスメイトの女の子たちが推しの先生を作って沸いていたから、です。ね、僕って単純でしょ。もともと、学校そのものは好きだったんです。単なる中二病で、自ら学校から逃げていた。それだけだった。だから、イチオシの先生をあなたにして、あなたに声を掛けて、あなたに好かれようとすることで、僕は学校に行く意味を見つけたんです。
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作者名：仁知夏 | 作成日時：2022年2月25日 22時
