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ズルズル、ズルル、ズルズル。
そんな音に耳を澄ませば、最早爽快感すら感じてくる。だがこの日本には、ヌードルハラスメントなる言葉すら生まれているらしい。生きづらい世の中になったものだ。
本当は、巷で美味しいとちょっとした話題になっている立ち食い蕎麦屋へと、今日という非番を駆使して出向きたかったのだけれど、生憎の大雨。
それも例年稀に見るほどの。この先百年は無いだろう、なんて今朝の情報番組で天気予報士が告げていた。
「お前は未来が見えるのか？」私はそう言いたい。
「姉貴！！そんなボーっとしてたら蕎麦、伸びますよ！！」
「うっせーな。良いんだよ、伸ばしてんだから」
「えぇ、そんなことあります！？」
「知らない？最近、伸びフェチって流行ってるんだよ。どうやら私もその可能性を秘めていたようだね」
「あー！だから、のびーるグミ的なの増えてきたんですね！」
「あれは違う」
「だとしたらもう理解不能です」
ザーザーという雨音すら気にならないくらい、どこからかやってきた気がかりな出来事が、脳の中にひたすら滞在していた。まあ早ければ、今日が終わった瞬間に帰国するが。
「こんな安っぽいカップ蕎麦食べる予定じゃなかったんだよ私は……あーあ、本当ならきっと今頃は蕎麦湯でしめてるとこだったな……」
屯所に、これでもかという程に存在するカップ麺。
口が欲している蕎麦を胃の中に放り込む事によって、少しでも立ち食い蕎麦屋へ行けなかった無念を晴らそうという気持ちで選んだものだったが、まあインスタントだなぁと言ったところ。
「そんな予定あったんですか？彼氏ですか？デートですか？しっぽりですか？」
「友達だよ友達。今年に入って特に仲良くさせてもらってる子なんだ」
「今年にそんな余裕ありました？」
「まあそこはパラレル」
「気付かなかったことにします」
「ありがとう」
五月十四日。そう、本日は私の友達の誕生日で、その子と出かける約束をしていた。女隊士として市民の安全を守る傍ら、休みの日はきっちりと遊ぶというのが私のモットーである。まあ今決めたとかそういう話は置いておいて、守るべきものを守れなくて何が正義の味方だ、という。
つまりは何が言いたいかというと、約束も守れないような人間が、それよりも大きなものを守ることなど出来ない。だから、気合を入れて珍しく仕事を終わらせていた。
「なのに……なのに！！なのに、何故神様は私にこのような試練を……！？天候て！！気合入れたのに天候でお釈迦て！！」
「まあ、どうしようもないスよね」
「その子、東北に住んでるの！！約束のためにわざわざ新幹線に乗って江戸に来てくれる予定だったの！！」
「まあ、どうしようもないスよね」
「自家用ジェット機もこれじゃあ飛ばせないしなぁ……頼みの綱はどこでもドア……」
「まあ、どうしようもないスよね」
ふと思い出そうとしても正確な日付までは分かりかねるが、取り敢えず今年に入ってからある一定の日時を過ぎた時、私とその子は毎日のように話していた。くだらない話が殆どだが、何故かたまに物凄く語り合う。そして下ネタで終わる。それが結果的にくだらない話となり、再びその連鎖は止まらない。
言うなれば、真っ赤に染まり上がっている人生のせいで充血した私の目の目薬。いつも幸せになれるのだ。
「桃太郎、私のこと好きだよね」
「へっ！？え、あ、好きです！！」
「じゃあお天道様の機嫌直してきて」
「無茶ですよそんな……」
「じゃあどこでもドア発明して」
「結野家とかだったら天気は変えられそうですけど、どこでもドアは源外さんにも無理そうだし……俺は、俺は姉貴のために何も……」
「使えねェ駒はゴミと一緒だ」
その子が私のことをどう考えていようが、私は彼女を心から好いている。可愛い女の子が好きというところで話があったり、性格が割と似てて共感し合えたり、とにかく好いている。
愛などという軽々しくもあり重々しくもある言葉では片付けたくないほど、かけがえのない友人だ。失いたくはないし、これからもよろしくしたい。
「だからこその立ち食い蕎麦屋だったんだよッ！！」
「何故にッ！？」
桃太郎はわかっていない。コイツはミシュランなどの評価を気にして、ランクを気にして、結局のところこんな場所に来れている俺すげぇ！とかいう感覚しか持ち合わせていないのだ。
「私は、立ちながら食べて足疲れたねェ、そうだねェ、ちょっと近くに休めるところあるから行かない？江戸も案内したいし、えぇ行く行く！望んでいた」
「プランしっかりしてますね。しかもヤル気満々」
「そんな目では見てないよ、まあ可愛いから無くはない」
「姉貴より可愛い人間なんて」
「そういうのいらない」
だがそんな気持ちも虚しく儚く消え散った。
友人は「別日で良いよ、雨だから仕方ないよ」という優しくて大人な言葉と『草』というスタンプを現在進行形で乱用していた。
そんな携帯電話を見るのすら辛くなってきた頃「つか巷で噂の店選んでる時点で姉貴もミシュランナルシスト派なんじゃ……」とか言い始めたので、右頬を抓り上げておく。
「電話でもっかい詫び入れてくるね」
「……そんなことより、姉貴」
「ん？」
「この伸び伸び蕎麦、どうするんスか」
「あー……食べといて」
「でしょうね」
水分を吸い切ったようにも見えるインスタント蕎麦を「姉貴の食いかけ……」なんて言いながら貪っていた桃太郎に冷たい眼差しを送りつつ、友人に通話をかけてみることに。
だが、数分後。
「だーめだ桃太郎」
「何がですか」
「アイツ、全然電話に出んわ」
「……」
雨が気温で雪に変わったような気がした。
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ひざ、誕生日おめでとう。
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ズルズル、ズルル、ズルズル。
そんな音に耳を澄ませば、最早爽快感すら感じてくる。だがこの日本には、ヌードルハラスメントなる言葉すら生まれているらしい。生きづらい世の中になったものだ。
本当は、巷で美味しいとちょっとした話題になっている立ち食い蕎麦屋へと、今日という非番を駆使して出向きたかったのだけれど、生憎の大雨。
それも例年稀に見るほどの。この先百年は無いだろう、なんて今朝の情報番組で天気予報士が告げていた。
「お前は未来が見えるのか？」私はそう言いたい。
「姉貴！！そんなボーっとしてたら蕎麦、伸びますよ！！」
「うっせーな。良いんだよ、伸ばしてんだから」
「えぇ、そんなことあります！？」
「知らない？最近、伸びフェチって流行ってるんだよ。どうやら私もその可能性を秘めていたようだね」
「あー！だから、のびーるグミ的なの増えてきたんですね！」
「あれは違う」
「だとしたらもう理解不能です」
ザーザーという雨音すら気にならないくらい、どこからかやってきた気がかりな出来事が、脳の中にひたすら滞在していた。まあ早ければ、今日が終わった瞬間に帰国するが。
「こんな安っぽいカップ蕎麦食べる予定じゃなかったんだよ私は……あーあ、本当ならきっと今頃は蕎麦湯でしめてるとこだったな……」
屯所に、これでもかという程に存在するカップ麺。
口が欲している蕎麦を胃の中に放り込む事によって、少しでも立ち食い蕎麦屋へ行けなかった無念を晴らそうという気持ちで選んだものだったが、まあインスタントだなぁと言ったところ。
「そんな予定あったんですか？彼氏ですか？デートですか？しっぽりですか？」
「友達だよ友達。今年に入って特に仲良くさせてもらってる子なんだ」
「今年にそんな余裕ありました？」
「まあそこはパラレル」
「気付かなかったことにします」
「ありがとう」
五月十四日。そう、本日は私の友達の誕生日で、その子と出かける約束をしていた。女隊士として市民の安全を守る傍ら、休みの日はきっちりと遊ぶというのが私のモットーである。まあ今決めたとかそういう話は置いておいて、守るべきものを守れなくて何が正義の味方だ、という。
つまりは何が言いたいかというと、約束も守れないような人間が、それよりも大きなものを守ることなど出来ない。だから、気合を入れて珍しく仕事を終わらせていた。
「なのに……なのに！！なのに、何故神様は私にこのような試練を……！？天候て！！気合入れたのに天候でお釈迦て！！」
「まあ、どうしようもないスよね」
「その子、東北に住んでるの！！約束のためにわざわざ新幹線に乗って江戸に来てくれる予定だったの！！」
「まあ、どうしようもないスよね」
「自家用ジェット機もこれじゃあ飛ばせないしなぁ……頼みの綱はどこでもドア……」
「まあ、どうしようもないスよね」
ふと思い出そうとしても正確な日付までは分かりかねるが、取り敢えず今年に入ってからある一定の日時を過ぎた時、私とその子は毎日のように話していた。くだらない話が殆どだが、何故かたまに物凄く語り合う。そして下ネタで終わる。それが結果的にくだらない話となり、再びその連鎖は止まらない。
言うなれば、真っ赤に染まり上がっている人生のせいで充血した私の目の目薬。いつも幸せになれるのだ。
「桃太郎、私のこと好きだよね」
「へっ！？え、あ、好きです！！」
「じゃあお天道様の機嫌直してきて」
「無茶ですよそんな……」
「じゃあどこでもドア発明して」
「結野家とかだったら天気は変えられそうですけど、どこでもドアは源外さんにも無理そうだし……俺は、俺は姉貴のために何も……」
「使えねェ駒はゴミと一緒だ」
その子が私のことをどう考えていようが、私は彼女を心から好いている。可愛い女の子が好きというところで話があったり、性格が割と似てて共感し合えたり、とにかく好いている。
愛などという軽々しくもあり重々しくもある言葉では片付けたくないほど、かけがえのない友人だ。失いたくはないし、これからもよろしくしたい。
「だからこその立ち食い蕎麦屋だったんだよッ！！」
「何故にッ！？」
桃太郎はわかっていない。コイツはミシュランなどの評価を気にして、ランクを気にして、結局のところこんな場所に来れている俺すげぇ！とかいう感覚しか持ち合わせていないのだ。
「私は、立ちながら食べて足疲れたねェ、そうだねェ、ちょっと近くに休めるところあるから行かない？江戸も案内したいし、えぇ行く行く！望んでいた」
「プランしっかりしてますね。しかもヤル気満々」
「そんな目では見てないよ、まあ可愛いから無くはない」
「姉貴より可愛い人間なんて」
「そういうのいらない」
だがそんな気持ちも虚しく儚く消え散った。
友人は「別日で良いよ、雨だから仕方ないよ」という優しくて大人な言葉と『草』というスタンプを現在進行形で乱用していた。
そんな携帯電話を見るのすら辛くなってきた頃「つか巷で噂の店選んでる時点で姉貴もミシュランナルシスト派なんじゃ……」とか言い始めたので、右頬を抓り上げておく。
「電話でもっかい詫び入れてくるね」
「……そんなことより、姉貴」
「ん？」
「この伸び伸び蕎麦、どうするんスか」
「あー……食べといて」
「でしょうね」
水分を吸い切ったようにも見えるインスタント蕎麦を「姉貴の食いかけ……」なんて言いながら貪っていた桃太郎に冷たい眼差しを送りつつ、友人に通話をかけてみることに。
だが、数分後。
「だーめだ桃太郎」
「何がですか」
「アイツ、全然電話に出んわ」
「……」
雨が気温で雪に変わったような気がした。
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ひざ、誕生日おめでとう。
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堕天使(プロフ) - なつみ@にゃっつさん» ほんとにコメントありがとう()本編もふぁいてぃんします！ (2018年5月16日 16時) (
レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - おとさん» 私も愛してます。来年は計画的に祝うって誓います。走り刺さりの神様に誓います。天津飯より。 (2018年5月16日 16時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ@にゃっつ(プロフ) - ぐああああああ！好き……(その調子で本編もふぁいと())応援しとるけん。(あれ、なんか意味不ですいませんん) (2018年5月15日 17時) (レス) id: ed542c7469 (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 今まで祝われた中で1番素敵な祝われ方でした。大好きです。愛してます。なんて言葉ではすまされないなぁなんて思ってます。草。ひざより。 (2018年5月14日 22時) (レス) id: 6e4da90966 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：堕天使
| 作成日時：2018年5月14日 21時
