口兄/鬼捏造超短編【更新未定】

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口兄/鬼の超絶大幅捏造につき注意。

更新未定です。もしかしたら同じ形式で更新するかも。

ご本家様からかけ離れています。

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《ここから……だして……》

卒業前日の放課後、微かに聞こえたアイツの声。あの日の記憶は、俺以外残っていない。何故かは俺にも理解できないが、その声はどうやら俺にしか届いていないらしい。

卒業式も間近に迫った今日、ハッキリとそう聞こえるようになっていた。その声の主は何度も俺に訴えかけるように「ここから出して」と言ってくる。

《ゾ……ムぅ……出し……て……》

そしてその声は、懐かしい、かつ憎たらしいあの人の声だった。

〈おいコラゾムぅ！！またお前かコノヤロー！！手ぇ出るよォ？！〉

〈おいおい暴力陰キャ先生ぇよォ！！こっち来いよォ！！〉

〈なんだとォ？！ブチブチのブチだなこりゃ〉

毎日当たり前のように先生と追いかけっこして廊下を走ってはいつもは温厚な理事長とかいうジジイに怒られた俺達。

「おいゾム置いてくぞー」

「またあっちの方向に歩いてったで」

「大先生達は先に帰っといて～。後から追いつくからさ！」

「分かった！じゃあなゾム！」

声がハッキリと聞こえた今、会いに行かなきゃ。アイツに。

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卒業式当日、俺は弟の卒業を間近で見る為、仕事を返上してこの場所へ還ってきた。

あの日の記憶は弟にもその友達にも無い様子で、まるで何事も無かったかのように時間が流れた。

誰かが世界一高い山に登頂成功したらしい時も、誰かが化け物になって化け物と戦ったと聞いた時も、誰かがかつて誰もが夢見た仮面のヒーローになって化け物と船の上で戦ったって聞いた時も、誰が化け物か誰が人間か分からなくなっていると聞いた時も、一瞬たりとも、

アイツのことを忘れることは出来なかった。

それはアイツの呪縛に囚われてしまっているようで、心地のいいものではなかったが、何故か、懐かしい呪縛だ。

それは、目の前のこの少年も同じ。

「兄さん、俺どうしたらいいんでしょうね」

「俺にも……分からないよ……」

「俺は、アイツが嫌いで、好きやった。だから」

そう言って、祠の方へ足を運んでいく少年。俺は、彼を連れ戻さなければいけないのに、怖くて足が動かない。

「ダメだ！そっちに行っちゃ！」

そう叫んでも彼はフッと微笑み足を止めることは無かった。

「アイツらに……楽しかったって言っといてください。ああそれと、アイツらだけや無くて、隣のクラスの奴らや5年にも。よろしくな、兄さん」

そう言って彼は祠の中へ足を踏み入れた。

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卒業式にアイツは来なかった。その名前を持つ者は、卒業証書を握ることは無かった。俺は、大きくなって兄さんに全て聞いた。アイツが卒業式の日に消えた事、そしてその理由。どっかのアニメの世界かと最初こそ受け流したものの、未だ見つからない辺り本当らしい。

「なんで……隠してたの……」

「アイツが……言ったんだ……大きくなってまた会いたい、だからその時に全て話せ。って」

その言葉を聞いた瞬間、俺は本能的にあの場所へ向かっていた。
この足は、理性では止められない。

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足を踏み入れるとそこは暗闇が広がっていて、真ん中にガラス張りの部屋の中で鎖に繋がれたままの先生が居た。

「せんせ……俺、来ちゃぁー」

そう言うと、先生は口を動かして、俺に「馬鹿か」と言った。俺は大きな声で「お前じゃい！」と返し、笑った。

先生はゆっくりと目を開け、俺に言った。

「……戻れ……待っていてくれる……仲間が……お前には……居るだろ……」

「……」

俺は、黙るしか無かった。俺はあの時(・・・)、呪いを受けるべきだった人間だ。俺が正当に引き継いでいれば、彼がこうなることは無かったのに。

「俺が……自分でやった事だ……お前が……責任を負う……事は無い……それに、俺は……もう……死んでいる……」

急に聞かされ事実に俺はハッとさせられた。そんな事、とっくのとおに知っている。だからこそ、受け入れたくないし、夢で、悪夢であって欲しいと何度願ったか。何度願ってもその願いは届くことなく時はすぎ続け、アイツらはあんなに大好きだったはずの先生を忘れた。

俺と兄さんだけが、先生の懐かしい呪いに囚われたまま卒業式当日を迎え、始まる前今、俺はこの場所に立っている(、、、、、)。俺、先生に勝ちたかったわけでも、認めて欲しかった訳でも無い。

俺、先生とずっと居たかったんだって、遊んでいたかったんだって、居なくなってから気づいた。

「俺は！先生に見て欲しかった！中学行って……いい成績取ってさ……佐山県一の高校行って……それで……それで……！！」

伝えたい事がありすぎて詰まっている時、ジャラっと鎖の音が聞こえて、その後に先生は俺にこう言った。

「俺は……ここで……見てるから……見てるから……だから……お前は……もう戻れ……」

先生が指さす方向には先程入ってきた祠の入口があった。そこからは太陽の光が差し込み、まだ夜が来ていない事を示していた。そして先生が指さすのと逆の方には、鬼の面と刀が。

俺はそっちの方へ足を運んだ。先生を助ける、救う。その一心で。

「馬鹿！！それに触るな！」

先生はそう言っていたけど、もう俺は

チカラ二オボレタ。

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俺たちは数年ぶりにここ、零蛇小学校へやってきた。あの時よりも少し大人になった俺たちは、引き寄せられるように本能のままに此処へ集った。

「お前らもかいな……またややこしいメンバーばっかり……」

「いやぁお変わりないねぇトントン君」

「あれ？お前兄さんどうした？」

「仕事だよ！一応公務員なんだよ刑事も！」

とあの頃と変わらない拙い会話を繰り広げながら、母校の中へ入っていった。

アイツが、待っている。

.

しばらくすると、チャイムがなって、俺たちは当時の教室へ引き寄せられた。
そこに、アイツは座っていた。

「ーー？！」

「よォお前らァ……久しぶりやなァ……」

ソイツはもう、俺たちと一緒にいたアイツじゃない。
先生との追いかけっこを無邪気に楽しんでいたアイツはでは、無かった。

「ゾ……厶……？！なん……や……その、す、がたは……」

皆が呆気にとられていたのも束の間、一瞬で俺達に近づくと、俺の首を掴んでこう言った。

「お前ハ呪われタ……呪イから逃げられルト思うなよ……」

俺は察した。もう、死んでしまうーーーーーー

.

.
「救え！！」

.

刹那、懐かしいような声が聞こえた気がした。その声はハッキリと「救え」と言った。俺達はもう、「救えない」のに。

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先生、俺もう戻れないや。

どれだけ願ったって、大事だったハズのアイツらまで手にかけてしまったんだ俺は。

先生は、そんな事しなかった。あの時だって、仕方なかったハズなんだ。

だけど、俺は違う。

僕は、自分の意思でアイツらを手にかけた。葬り去ろうとした。

先生の言う「正義」、俺は守らなかった。

今の俺は、アイツらにとっても、先生にとっても。

.

.
悪役(敵)だ。

.

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「救え！って聞こえた！アイツを、ゾムを救うぞ！」

アイツは「救え」と言っていたが、正直何をどう救えばいいのか分からない。
そしてゾムの眼差しは人間を遥かに超越した【何か】で、それはまたゾム自身ではない様子であった。

「くっそ！なんか武器は無いんか！」

皆対抗するため、生きるため、血眼になって武器を探すが見当たらない。俺はと言うと、言葉の意味が分からずただ呆然と立ち尽くしたままだった。

「呪い……」

そう、呟いた瞬間、俺の中に誰かの記憶が流れ込んできた。

今まで経験したことの無い激しい頭痛と、体の痛みや痺れに襲われ、身動きが取れなくなってしまった。さっきまで立っていたはずの床に今にでも飲み込まれてしまうんじゃないかと勘違いしてしまうくらい重力が働いたように感じて、ずっしりと何かに肩に乗られた感触、足を掴まれた感触もした。

「なんッ……やァッ……この記憶はッ……」

ハッキリとしない朧気な記憶の中に散らばるは真っ赤な血。それは決して作り物でもなんでもなく、ただひたすらに本物の血だった。

しかもその血を流しているのは目の前にいるアイツらにそっくりな人たち。俺たちの未来を表したようなその顔つきに一層寒気を覚えた。そしてもうひとつ。

その血を流している人間の中に

.
【俺】は、居なかった。

.

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救えと言われ対抗手段をいち早く見つけた俺は、アイツと互角とまでは行かないが戦える準備が整った。

なんだろう、この感じ。前にも経験したことがあった気がする。この一触即発の、一発でも喰らったら即アウトな感覚、どっかで味わったことのある気がする。決して遊園地のアトラクション程度では経験が出来ないようなまさに【死】に直結するような、そんな感覚。

目の前で刀を振り続けるコイツの目には、心做しか涙も見え始めた。まるでコイツも何かと闘っているかのようだった。呆然と立ち尽くしたままのアイツは、いい音を立ててその場に倒れ込んだ。そして残りのふたりは武器を探しにまだ出回っている。そのため、今コイツを止められるのは、

.

俺しか、居ないんだ。

.

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状況は厳しいままだ。それは俺が幼い頃から出来ているから分かる。たとえ俺たちが武器を手に入れても、変わってしまった仲間(アイツ)を解放してやる事はできない。救うと言ってもそれだけでアイツの言う「救い」が出来るとは限らない。

迷っている暇はないのに教室に入るのを体全体が拒否している。一番体格があるアイツはあんなに抑えるのに必死になってくれているのに、知恵も何も貸してやれないんじゃただの弱者じゃないか。

「トンち、何してんのさ。仲間、助けなアカンやろ」

止まっているとそっと背中をアイツが押してくれた。俺は「分かっとるわ」とぐちゃぐちゃになった泣きそうな顔で返した。なんでアイツに背中を押されないといけないんだとも思ったが、それ以上に俺は、

.

.
仲間(アイツ)を、かっこいいと思った。

.

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もう、迷って止まっている暇はないんだ。一刻も早くアイツを助けてやらないと。

ここにいる四人全員がそう思っている筈だ。なのに、それなのに。

「ヘイヘーイ、そんなんジャオレは止まらんぜオイ」

コイツは、止まってくれない。俺らは、止められていない。俺たち四人から逃げ回るくせして攻撃も躱さないと当たる距離までしっかり詰めてくる。もう、どうしようもない。ごめんな兄貴、俺じゃお前をどうやら救ってやれなかったらしい。もう、俺には無理らしい。

俺が無理でも、兄貴ならきっと闇に負けない。踏ん張れるはずだ。だって、俺が憧れた、同級生の【兄貴】
なんだから。

.

.
兄貴、踏ん張れ。

.

.

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もう居ない。ここには。アイツを止められる人間は、もう居ない。ここにいる四人が絶望を抱いたまま諦めようとしていた、その時だった。

「お前らァ！！俺だ！！らっでぃだ！！よく聞け！ソイツは絶対に殺るな！！殺ったらきっと後悔する！！水晶だ！水晶を探せ！ソイツを救え！！！お前達なら、絶対に出来る！！俺の、教え子達なんだからなぁ！！」

そう言って声の主は放送を切った。
懐かしさに溢れた声が聞こえた。

何故だ？【彼】はこの世界には居なかった筈なのに。【彼】は、あの中に居たはずなのに。

.

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先生、もう一度、俺らの先生(ヒーロー)になって下さい。助けて、先生。
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