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彼が側にいてくれるだけで

こんなにもあたたかな気持ちになれるなんて

思いもしなかった――



屑籠さんの短編小説コンテストに参加させていただいています!

短いですが、よろしくお願いします!
「あーぁ、ホントに嫌になっちゃうな」


ザァザァと降り出した雨空を見て、ため息が自然とこぼれ落ちた。

今朝の天気予報では降水確率50%。

だから、雨が降らない方に賭けて傘は持ってこなかった。

結果、賭けには負けた。


誰か友だちの傘にいれてもらおうかな? なんて思いもしたけれど、現在午後七時。

校舎は真っ暗で人がまばら。

少なくとも私の友だちはその中にいない。

みーんな部活はとっくの昔に終わって、すでに帰っただろう。


私?

私は絵を書くのが好きだから美術部に入っていて、絵の具の片付けに手間取って遅くなってしまった。

今日は調子が良くて集中してしまったことも原因である。


まぁ、終わってしまったことにあーだこーだ言っていても仕方がない。

学校から10分までの駅まで走ればいっか。

そうと決まれば屈伸運動。

久しぶりに走るから、肉離れとか捻挫をしたりだとか悲惨な目に合う確率をほんの少しでも下げといた方がいい。


さぁ走るぞ! と昇降口から飛び出したその時、


「傘を忘れたバカはっけーん」


クスクスと笑う声とともに聞き覚えのありすぎる声が背後から聞こえてきた。

嫌な予感と一緒に恐る恐ると振り返る。


「ゲッ」


嫌な予感はよく当たると言われるもの。

私の『天敵』がそこに立っていた。


「『ゲッ』ってなんだよ。女らしくもねぇな」

「らしくなくて結構。私に構わないでって、いつも言ってるじゃん」

「ハッ、そんなこと言うなら入れてやんねぇぞ」

「ヴッ……」


傘を忘れた私に見せつけるかのように、彼は顔の横で折りたたみ傘を振る。


あ、入れてくれるつもりはあったんだ……

若干失礼なことを思う。

いや、それも仕方がないと言いわけをさせて。

普段、私をからかうしかしない奴がそんな善人のようなことをするとは思いもしないじゃん。

が、それも私の思い違い。


「で? 入れてもらいてぇなら、なんて言えば分かるよなぁ?」


ニヤリと口角を歪めた、まさに悪人ヅラした彼に私が出来ることはただ一つ。


「…………うぅ……傘に入れさせて、ください……!」

「よく出来ました」


満足気に笑った彼が、ただただ憎たらしい。





「いや、駅までで大丈夫だから!」

「そんなこと言うなって。おまえもいちおー女だろうが」

「……一応っていうな!」


どうしてこうなった。

何度目になるかわからないやり取りに、現実逃避をしたくなる。

私としては駅まで彼の傘に入れてもらえれば、それだけで御の字だった。

けれども、実際は私の家まで送ってくれるらしい。

待って待って、何をたくらんでいるのか考えれば考えるほど明日が怖くなる。


一人でさえ狭い折りたたみ傘。

二人で入ればもう見なくても分かる。

彼の肩が片側濡れている。

反対に私はあまり濡れていない。

くらくらと視界が揺れる。

明日は雨かな? 雨かもね?

ハハッと笑う。

おもしろくない。


先ほどまでほんの数センチ開いていた彼との距離。

それすらも今はもうなくて、距離は0センチ。


「風邪引くといけねぇからもっと寄れ」


なんて彼に引き寄せられた腕に、


「どこのイケメンですか?」


と呟いた私へ、


「ここにいんだろ」


って返されてキュンとしたのはなにかの間違いだ。


間違いついでに私もらしくない言葉を発してしまう。

数センチ上にある彼の顔を仰ぎ見て、ニコリと笑う。


「ありがとう」

「……何がだ?」

「わざわざ家まで送ってくれて」

「気にすんなって言ってんだろ。俺がしたくてやってんだ」

「それでもありがとう。かなり助かった」

「……なら良かった」


彼がホッとしたような顔をしたのは気のせいだろうか。

私はまだ見ないフリをして言葉を重ねる。


「ねぇ一つ、聞いていい?」

「……内容による」

「なんで私を送ってくれたの?」

「……にっぶ。言わせる気か?」

「私も同じ気持ち……そう言ったら信じてくれる?」


ハァ? と意味が分からないと言いたげな表情を浮かべる彼。

さらにひと押しする。


「もしかして、女の私から言われるつもり?」

「……うっせ」

「なら私から言っちゃ──」

「黙ってろって」


遮られた言葉。

私に触れた柔らかな唇。

彼にキスされた、そう理解するには一瞬で──


「……何か言ってクダサイ」


そう真っ赤になった彼に、私は微笑んだ。


「あなたの隣にいさせてくださいね」

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作者名:悠莉 | 作成日時:2020年4月21日 0時

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