作者が伝えたいこと

暗い教室に一人うずくまってるあの子。

最近のいじめのターゲットになったあの子

私の元親友のあの子

私がいじめられてた時に約束を破ったあの子

ーーー
「今日も指切りね！」

『うん！指切りげんまんどっちがターゲットになっても助けてあげる！指切った！』

ガラガラ…

コツン。

教室に入った途端に顔に当たったのは丸めた紙くず。

（もしかして…）

そっと開けてみる。

そこには予想通り

「あんたが"生贄"」

の文字。

今度のターゲットは私か。


心の中では、
紗季が助けてくれるという淡い期待を抱いてた私。


一歩で届く紗季に近づく。

『紗季…』

約束したから。

紗季は裏切らないと思ってたから

なのに…

「触らないで。近づかないで。話しかけないで。」


信じられなかった。

紗季は、約束を守ると思ってた。

クラスのみんなは、
かわいそう。
残念だねww
無視無視
反応はそれぞれだった。



なんで？
そう思う暇もないくらい早く背中を思いっきり叩かれた。


私が転ぶとみんなで蹴り始める。

（とにかく蹴られる範囲を狭くしなきゃ）

そう思い体を丸める。



背中に来る痛み。

足にくる痛み。

でもそんなことよりも1番痛かったのは




心だった。


紗季は約束したのに。


助けるって言ったのに。


後悔と、無念と、悲しみと、苦しみと、そして体の痛さと、
凄く心にいろんな感情が入り混じってた。


なのにあのこは、
私がいじめられるターゲットが終わった瞬間
「おっはよー！あ、昨日のテレビ見た？」

なんでそんなに普通に話すの？


けど私は思いもしなかった。


半月ごとに変わるクラスの生贄


その私の次が、あの子になるなんて。



私が生贄だったのは先週


紗季には悪いけど、さっきも軽くスルーしてしまった。


ガラガラ


「みんなおはよ…」

コツン



紗季の顔に当たる紙クズ



私は関係ないと言い聞かせて、そのまま素通りする。


「え？みんな？冗談だよね？ww」



でもみんなは本気なようで私の後ろで紗季は
「痛い。やめてよ！」
と抵抗してる。



しかしみんなはそれでも紗季を蹴り続けてる。


見なかったことに。



そんな自分が最低だということは知ってた。



自分があの苦しみは知ってた。



けど紗季だって、同じことをしてきた。




だったらいいよね？



ーーー



放課後の暗い教室にまだ、あの子はいる。



私の元親友のあの子。



私を裏切ったあの子


でも、最近は…


あの子が受けてるいじめは私よりもひどくなってた。



今日は髪の毛を切られたらしい。


昨日は制服を切られてた。


あの子の長く綺麗だった髪の毛は短くぼさぼさに切られていて、




あの子のいつも整った制服は泥水らしい液体でビチョビチョに汚れてた。



あと一日で、あの子のいじめも終わると思ってた先週。


なのにいじめはまだ続いてた。


先週まで私はずっと、苦しかった。



たまにこっちを見てくるあの子の目が、



（助けて…）



そう言ってるように感じた。



だから先週ようやくこの苦しみから解放されると思った。



私を裏切ったあの子は、また、今日も空き教室で泣いてる。



助けたい。



心の隅で思ってても、



また自分がいじめられる



そんな思い。



あっ…




そっか。


あの子も



自分がなりたくなかったんだ。




もしここで私がほっといたら、




助けなかったら、



さっきいじめの主犯者達の会話を聞いてしまったからこそ



今なら助けてあげれる



私は聞いたんだ



ーーー


「ねぇ明日はゴミをどうやって遊ぶ？」

ゴミ？あぁ。いじめのターゲットのことか。

「うーん。空き教室に呼び出して軽くカッターで切ってあげる？」


「いいねそれ。反応楽しみ」


「でもその前にぃいつもの"あれ"してからねぇ」

！？
カッターで切る？
この言い方だと多分物じゃない。



もしかして…あの子を切るってこと？


「いいね。wwゴミの、血見るの楽しみぃ」


ーーー

今ならまだ間に合うから


『ねぇ』

近づくと、あの子…紗季は、肩を震わせる。


「もうやめて」


声には不安と苦しみが混じってて、


私は事の重大さを理解した



『大丈夫。私だよ。助けるよ。』



そういうと、紗季は驚いたように顔を上げる


「なんで…」


隣にいた、紗季がいじめられている間仲良くしてくれていた真野もびっくりした顔をしてる。


「えなんで、秋乃は、助けるの！？紗季ちゃんが秋乃に何したか分かってる！？」



わかってる。


いじめられる辛さも


約束を破られる苦しさも


裏切られる怖さも


わかってるからこそ


『助けたい。紗季が、私を裏切ったのは変わらない。』


そこまでいうと紗季は、顔をうつむける。


気にせず続ける


『だけどだからと言って同じことをしていいわけがない。』


『同じことを私はしてしまったけれど、まだ直せる』


私が守るから。


その願いを込めて


力を込めて


『明日私と行動して。危険だから。』


『真野は、どっちでもいいよ。危険だし。』


「ありがとう。」


そういうあの子の目は潤んでて、さっきの涙なのか、それとも…

なんて考えたくない。


ーーーー次の日ーーーー

「おはよ…」

『おはようございます』

「みんなおはよう！」


あ、上から、紗季、私、真野ね？


案の定いじめの主犯者はびっくりしてる。


「少し秋乃こい。」

真野は挨拶だけすると私たちから離れた。


「ごめんね。」


通り過ぎる時にそう言ってたのは空耳ではないだろう。


『なに？』

「あんたさ、またいじめられたいの？」

案の定のことを言われる。


だけど、もう答えは決まってる。



『だから何？もしかして自分が強いと思ってる？友達がたくさんだと思ってる？』


自分でもびっくりするくらいスラスラと言葉が出てくる。

『一緒にいる子たちはほとんどが、あなたが怖いだけだよ。もしもあなたがいじめられることになったら簡単に手のひら返される。』


いままでためてたことばがでてくるかのよう


『今のうちにやめて、本当の友達を作ったほうがいいよ。』


これは挑発。


これは挑戦。


下手すれば私がターゲットになる。


けどうまくいけばグループが解散する。


「は！？そんなことないし！ね！あんたら！」


「……」

みんな黙る。

やっぱそうなんじゃん


これは解散の方に行くかな？


「なんか言いなさいよ！」


「ごめんねぇ今日からは、あんたをいじめるわぁ」

「そうだね」


「なっあんたら！」

解散か…

だけど次のターゲットができた。


なんで？


いじめはもういらないよね？


なんで？



みんなで仲良くできないのはなんで？

辛いから、怖いから、そんないじめの主犯者がいじめられる？


今までいじめられてきた人にとっては好都合。


いじめの主犯者が悪いのは確か。


だけど、このままじゃ


ずっと続く。


また私は、あの嫌な気持ちを、


味わないといけないのかもしれない


私があの子を陥れたのは確かだけど…


いじめられたらあの子はどんな気分になる？


「あ、秋乃？」

『あ、紗季ごめんね。どうかした？』

「大丈夫だった？」

それって私がってこと？それとも秋乃がってこと？

『もういじめはないかもね。だけど今度は、穂希ちゃんがターゲットになるらしい…「ほんと！？穂希がターゲットになるの！？」

『う、うん。そうだよ？』

紗季どうしたの？


もしかして一緒にいじめるとか言わないよね？


「やった。私の苦しみ味わってもらえる。」


そういう紗季の顔はもう紗季じゃないみたいで、怖くて、つい一歩下がったのが間違いだった。


「痛い！」


ハッと気づくとそこには真野の足


『真野ごめんね。大丈夫？』


「うん。まぁね。てかさ、紗季ちゃん穂希ちゃんいじめるの？」


『た、多分…』


「私は関わりたくないから無視しちゃうけどね〜」

え？


「まぁ、穂希ちゃんの次に顔が聞くのが私だから〜秋乃は、分かるよね？」


え？今言ったは空耳？


「まぁ私自身は手を下さないしそもそも興味ないから無視しとくけどww」


怖い。


真野も


紗季も


ほんとは



ほんとは？



私は



二人の何を知ってた？



何を知っててそんなことを言うの？



何も知らなかった



きっと紗季も、真野も、同じだ。



穂希のことなんて何も知らない



穂希だって紗季のことも、真野のこともそして私のことも



何も知らなかったんだ。



だからいじめたりしてた。



今の私にできることは何？




私は知ってるよ？



穂希は、ほんとは優しいことを



穂希は人一倍心配屋なことを


穂希は友達が傷つくと1番に心配してくれることを


だからこそ穂希と、紗季と一緒にいた時間が懐かしくて、



いつからか穂希は柄が悪い子たちと遊んでいって、



紗季と、私だけになって



気がつくと穂希はいじめの主犯者になってて、



昔みたいに、3人でいた頃が懐かしくて



また3人でいたいと願ってしまって



だからいじめを止めたくて、



紗季の辛さを止めたくて



なのに今度は穂希が、



なんで？



紗季は忘れたのかな？


3人で遊びに行って河原で追いかけっこしたことを


3人で笑いあってたことを



私には大切だからこそ


守りたくて



現実を受け入れたくなくて


穂希はいじめなんかしないって


思っていたくて


けど、紗季もいじめをしそう。


真野だってしそう


怖い


なんでするの？


紗季は、いじめられる気持ち忘れたの？


私は辛かったからこそ



紗季を助けたくて


なのに…



考えても答えは出てこない


どうするのが1番いい？


いくら考えても答えは出てこない


ーーーー1週間後ーーーー

答えはいまだに出てこなくて、


どうしよう


穂希はいじめられてて


でも穂希が私をいじめて、紗季をいじめたのは事実で、


その紗季と、真野は穂希をいじめてる。



私は傍観者


こんな自分好き？


嫌い


だって助けることも


いじめに参加することも


できない


どうすれば良いの？


考えてから一週間経ってて


早くしないと危険なのはわかってて


だけど一向にわからない


どうするのが良いのか


どうするのが正解なのか


正解？


正解はないんじゃないか？


自分が正しいと思ったことが正解じゃないのか？



じゃあ私が正しいと思うことをすれば良い


私が正しいと思うことって何？


今あるいじめを止めること？


いじめに参加すること？


どっちも私の力じゃできない


じゃあどうする？



私がいじめられてた時されて嬉しかったことって何？


私はみんながいないところだけでも話してくれたのが嬉しかった。


じゃあそうすれば良い。


自分が嬉しかったなら大丈夫



影からでも支えてあげれば良い



それが今の私にできる精一杯だから。


ーーー作者からーーー


何が言いたかったかというと、あなたは誰かを傷つけていませんか？

自分のイライラを誰かにぶつけていませんか？

私は今が嫌いです

自分やいろんなことにイライラしてます

そんな自分が嫌いです

だけどその気持ちを人にぶつけません

ぶつけられた人が傷つくから

自分が嫌な気持ちをしたからといって同じことを仕返ししてませんか？

この話の紗季になってませんか？

この話の真野になってませんか？

この話の穂希になってませんか？

私はこの話の秋乃になりたいと思います

自分が傷つくことを恐れず

自分が嫌な思いをしたことと同じことをせず

今の自分にできる精一杯のことをしてる

そんな秋乃に私はなりたいです

もしも辛いなら頼ってください

もしもイライラしてるならそれを人にぶつけず何にイライラしてるのか、なんでイライラしてるのか考えてください

そしたら自分の心が見えるはずです

そしたら自分の気持ちをコントロールできるはずです

私はこの話を読んでみんなが

自分自身を見つめなおして

再度自分自身のことを知るきっかけに

なってもらえたらと思います

あなたはあなたが正しいと思うことをしてください


自分がされて嫌なことを人にしないでください


当たり前のようで当たり前じゃない


できてるようでできてない


みなさん今日から意識してみませんか？


少しずつでも良いから


自分を変えてみませんか？