【SERVAMP】月光に侵される狂気【ヤンデレ】

12種類の結果パターン

「」:キャラクター、『』:あなた です - 2024年4月25日

『今日もすごかったよ、演奏』

夜の路地裏。隣に立つ大物君を肘で突く。

彼は照れ臭そうにそっぽを向いた。


彼の名はリヒト=ジキルランド=轟。

世界を凌駕する天才ピアニストである！

「…今日のはお前の為に弾いたから」

『なにそれ嬉しい』

吸血鬼関係の成り行きで仲良くさせて貰っているのだが、これってすごいことだよね。

『リヒトリヒト、いつものあれ聴かせて！』

私があらかじめ準備しておいた空き倉庫にリヒトを連れて行きそう懇願すると、彼はしょうがねぇなと呟きピアノを武器から実体化させた。

「__涙しろ」

短い合図と共に響き始めた美しい旋律。目を閉じれば瞼が熱くなり、零れ出す水滴の裏側に昔愛した幼馴染の姿が浮かんだ。

『…○○君』

幼いころ想いを寄せていた少年。それは彼が事故に巻き込まれて死んでしまったあの日から、ずっと探し続けていた姿。いつだって鮮明に、蘇る。

だから彼のピアノが好きだった。


…のだが。

突如響いた不協和音。

彼は鍵盤の上に無造作に手を置き、演奏を止めてしまった。

『あれ、リヒト…？』

私が顔を上げた時にはもうピアノは無く、彼は倉庫の入り口を背にして私の前に立っていた。

「…お前はいつだってそいつのことしか考えてない」

怖いくらいの端整な顔付き。そのパーツの一部である唇から奏でられる音色は、彼のピアノからは想像できないほどにドス黒くて。

「俺はYOUの幸せを願ってお前の為にピアノを弾くのにお前は俺のことを道具としか見ていない…！」

腕を掴まれた。そのまま壁際に押し付けられ、背中を強打する。

『うっ…』

私が可愛げもない声を上げると、何故か彼は急にうっとりと目を細めた。

「ああ、その音は美しい。あいつの名前を呼ぶあの音より、ずっと__」

いつもしかめっ面な彼がふにゃりと頬を緩めている姿はどこか滑稽だった。

建てつけの悪い扉。その隙間から漏れ出る月光は、まるで彼を照らすスポットライトの様で。

「今まで俺が奏でた音の分__」

彼は何かを呟くと、私に覆い被さり唇を重ねた。


***


「今日はその綺麗な音を、たくさん聴かせてくれ…」

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